ライフ

世界の3割が、AIでラブレターを書くらしい。スナックのママを落とすために、おっさんも挑戦してみたが……

生成AIが叩き出した情熱的なラブレターの文章

無題640“親愛なるミサキママ様へ、 突然の手紙、お許しいただければと思います。ラウンジ美咲で過ごす時間は、まるで別次元のような特別な瞬間です。毎回、あなたの華やかさ、スマイル、そして魅力に魅了されっぱなしです。 ラウンジ美咲の一角に立つあなたはまさに女王のようで、その雰囲気に引き寄せられています。美しさだけでなく、あなたの自信に満ちた態度が、私の心を震わせています。 これは普通の感謝の手紙ではありません。あなたには特別な場所が私の心の中にできています。あなたの虜になっていることを素直に伝えさせてください。 もし一度、ラウンジ美咲以外でお会いできる機会があれば、ぜひ共に時間を過ごせたらと思っています。あなたの魅力に触れ、もっと深く知りたいという欲求が私を駆り立てています。 おそらくこれは少し勇気を要する手紙かもしれませんが、私は素直な気持ちを伝えたくてたまりませんでした。ラウンジ美咲でのひとときが、これからも変わらず素晴らしいものでありますように。 熱く、そして心から、竹下浩平” 「けっこういいんじゃないですか?」  僕の言葉に竹下さんは不満げだ。 「女王って表現が良くない。彼女は女王みたいな華やかなの嫌いだ。やっぱAIだな、そのへんの機微を分かってない。彼女が好きなのは女王より武将だな。戦国の小説とか読んでるし。女王じゃなくて武将って表現を使うようにしてくれよ。そういう表現にしないと見当外れになるから、AIが書いたって思われちゃう」  そりゃAIが書いているからな、という言葉をグッと飲み込んでAIに指示を出します。ってか武将要素を取り入れたラブレターってなんだよ。 “親愛なるミサキママ様へ、 お忍びの手紙を許してください。ラウンジ美咲での時間は、まさに私にとっては武将が城下町に舞い降りるような、勇壮で魅力的な瞬間です。 あなたのたくましさと優雅さが、まるで武将のような存在感を放っています。ラウンジ美咲が戦場であり、あなたがその中心に立つ武将として私の心を掴んで離しません。 あなたの微笑みは、まるで戦勝の兆しのようで、私の心を勇気づけてくれます。あなたの知恵と温かさが、私を包み込んでくれるようで、まるで味方の武将に支えられているような安心感があります。 もしも、お時間が許されるなら、ラウンジ美咲以外の場所でお会いできたらと夢想しています。私はあなたのもとで、共に冒険に挑む仲間になりたくてたまりません。 ラウンジ美咲で過ごすひとときは、私にとってはまさに武将としての栄光の瞬間。これからもあなたの勇壮な魅力に引き寄せられ、心の中で一緒に冒険し続けられることを楽しみにしています。 武将のような誇り高さと共に、竹下浩平”

武将にこだわり続ける竹下

「どうですか?」 「なにこれ?」  こっちが聞きたいわ。 「うーん、ちょっと違うんだよな」  そう、さすがに武将を取り入れてしまうとラブレターみたいな甘ったるい雰囲気から大きく離れてしまう。なんだよ、武将が城下町に舞い降りるような瞬間って。 「ラウンジ美咲以外の場所でお会いできたらと夢想しています。って店外で会いたいってことだろ?そういうの良くないんじゃねえかな」  気になっているのは武将じゃなくてそこなのかよ。 「店外で会いたくないってことですか?」 「いや、会いたいんだけどよ、それを手紙に書くのは下心がありすぎじゃない?」  下心があるからラブレターを出すんだろうに、妙にかっこつけたがる。 「じゃあ表現を変えてもらいましょうか」 「そうだな」 「どういう表現にしますか?」 「共に敵陣に攻め込む、でどうだろう。それだと武将っぽいし下心なく店外デートに誘っている感じがしないか?」  ちょっとよく分からないけど、言われたままに指示を出す。
次のページ
武将の方向にアップデートされ続ける生成AI
1
2
3
テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


記事一覧へ
おすすめ記事