ライフ

6歳のときに別れた息子と、12年ぶりに再会するおっさん。愚かでも、人は生きていかなければならない

おっさん2おっさんは二度死ぬ 2nd season

おっさんたちの12年

北関東へと向かう高速道路、そこをひた走る小さなレンタカー。その中に4人のおっさんがひしめき合っていた。 休日ということもあってか高速道路は混みあっていて、周りの車を眺めていると、どこかにキャンプでも行くのか若者たちが大きな車に乗り合って楽しそうにしていた。そんな中、こちらの車内はやや空気が重かった。 他の楽しげな車と異なり、こちらは旅行というわけではない。その先にあまり楽しいことが待ち受けていなさそうなので沈痛にならざるを得ない状況があった。 「12年ぶりなんだよ、坊主、でっかくなってるかな」 事の発端は、田原さんのそんな言葉だった。田原さんは重度のギャンブルジャンキーだった過去があり、そのときに作った借金が原因で離婚していた。ギャンブルは怖い。図らずもこの原稿を書いている時点で飛び込んできたホットニュースとリンクしてしまった。 それにより6歳だった息子とも別れることになったが、その別れの日も田原さんは馬券を買っていてその結果ばかり気になっていたというのだから、まあ、どうしようもない人だった。

そんな田原さんに届いた、一通のメッセージ

そんな田原さんもすっかりと心を入れ替え、ギャンブルから足を洗った。詳しくは知らないけれども自己破産とかもして借金を清算し、迷惑をかけた周囲の人に金も返したようだ。養育費のようなものも少しずつ払うようになったらしい。 「まあ、それでも俺がしでかしたことに比べたらぜんぜん足りないんだけどな」 それでも、田原さんの元妻は、息子に会わせてはくれなかった。田原さんも半ば諦めつつあり、それでも養育費だけは払い続けていた。 ある日、田原さんのSNSに1通のメッセージが届いた。 「お父さんですか?」 元妻から父親の名前だけは知らされていた息子が検索を駆使して田原さんのSNSアカウントを見つけ出し、メッセージを送ってきたのだ。ネット社会が発展するとこういうことが起こるのだ。 「それで会うことになってよ、こんど北関東まで行くんだ、坊主、おっきくなってるかな」 楽しそうにウキウキしてた田原さんだったが、おっさん仲間である高橋さんが余計な一言を放った。 「12年ぶりだろ、いまさら会いたいって変じゃね? 本当は恨みとか持っていたりして。いきなり殴られたりして」 その言葉に田原さんは完全にブルってしまい、会いに行かないとまで言いだしてしまったのだ。高橋さんはこういう余計な一言が多い。
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おっさん連中で田原さんをガードすることになったが……
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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