ライフ

6歳のときに別れた息子と、12年ぶりに再会するおっさん。愚かでも、人は生きていかなければならない

恐ろしいヤンキーと化していた息子

まだまだこの街にはオールドタイプのヤンキーがいるんだと感心していると、そのヤンキーがドカッと給水機Bの横にある座席に座った。 「息子、バリバリのヤンキーじゃねえか」 伝説のヤンキーがたまたまその席に座っただけだとも考えたけれども、田原さん曰く、「目印に赤いシャツを着ている」と言っていたらしく、ヤンキーは改造学生服の中に赤いシャツを着ていたので間違いないようだ。その赤いシャツも龍虎みたいな絵柄が入っており、明らかに攻撃力が高い代物だった。 「大きくなったなあ」 僕たちは完全にブルってしまっていたけど、田原さんだけはそのヤンキーを感慨深げに眺めていた。 「でも、あれだけ大きくなっているとさ、このプレゼントはまずいよな」 田原さんが手に持った「アンパンマンギター」を見つめる。やっと気が付いたか。やばいなんてもんじゃねえよ。そんなもんはやくしまえ。普通のパターンでもやばいのに伝説のヤンキーに「アンパンマンギター」なんてプレゼントしたらどうなってしまうのか想像もできない。 「い、急いでなにかプレゼントを買ってくるべきです」 そう、ここはショッピングモールなのだ。その気になればいくらでもプレゼントを購入できる。 「な、なにを買ってくればいいんだ」 焦る田原さん。18歳の男の子がもらって喜ぶプレゼント。それもヤンキー。そう考えるとまあまあ難しい。

急いで他のプレゼントに差し替えを提案

「SIMフリーのiPhone買ってきてください! あれを貰って困る人はいない。使わないなら売ればいいし」 僕が指示を出す。 「あれ16万くらいすんじゃん。そんな金、ねえよ」 他の屈強メンツも案を出す。 「覚醒剤とか喜びそう」 アホか。ショッピングモールに売っているわけないだろ。それにいくらヤンキーでも覚醒剤はやってないだろ。いいかげんにしろ。 「ダガーナイフとかどうですか?」 それでそのまま刺されるわ。 結局、屈強な二人と田原さんは、なにかを買うためにモール部分へと走り、僕がその間の時間を繋ぐことになってしまった。 「こんにちは」 そう話しかけると、伝説のヤンキーは人でも殺しかねない睨みを効かせながらこちらを向いた。 「テメーがオヤジかよ」 かなり攻撃力が高そうだ。そうではなく、君のお父さんは君に会うのが楽しみ過ぎて、プレゼントを選ぶのにすごく悩んでしまって、まだ悩んでいるんだ、だから遅れるみたいな話をした。 「プレゼントなんかいらねえよ」 かなり攻撃的だけど、時間を繋ぐために話しかけねばならない。 「どうしてお父さんに会おうと思ったの?」
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とんでもない行動に出た、父・田原
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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