ライフ

元“ヤマンバ”ギャルの37歳女性が“未婚の母”を選んだ理由「シングルマザーだって楽しく生きていける」

 平成ギャルがトレンドになっている昨今。見た目だけではなく精神性にも注目が集まり、ポジティブに自分らしさを貫くマインドが支持されているという。そうした再ブームで気になるのは、かつて渋谷センター街を賑わせていたギャルたちの今だ。10代・20代を謳歌していた彼女たちは、年齢を重ねてどのような女性になっているのだろう。
きょん

ギャルサー時代のきょんさん(提供写真)

 今回登場するのは渋谷のギャルサークル「アンジェリーク」の元副代表・きょんさん(37歳)。アンジェリークといえば、2001年に設立され、現在でも若い層に影響を与え続けている伝説のギャルサーだ。渋谷を練り歩くサークルメンバーの様子はメディアでも度々報じられ、当時まだ幼かった筆者の記憶にも強く記憶に残っている。現在、きょんさんはシングルマザーとして2人の子供を育てているという。そんな彼女に、アンジェリークがもたらした影響とその後の人生について話を聞いた。

「もっと強めにして!」アンジェリークの厳しいルールで培った学び

きょん

きょんさん(37歳)

「アンジェリークに入ったから、人として強くなったのかもしれないですね」  きょんさんはそう語る。渋谷109近くのショップで働いていたところ勧誘を受けてアンジェリークへの加入を決めた彼女。やるとなったら徹底して取り組むタイプだ。サークルの副代表まで務めたが、“まだやりきれていない気がする”と在籍期間を1年延長させた。  とにかくアンジェリークに夢中だったと当時を振り返る。 「よく漫喫でオールして、企画書やタイムテーブルを作ったりしてましたね。あとはイベントで配るパンフレットを印刷会社に依頼したり、副代表としてメンバーのサポートや育成をしたりとか。今思うと早いうちから社会人経験をさせてもらったような感じでした」  サークルはルールも厳しかった。「人に媚びを売らない」「ノリよく、ガメつく」「週5で日サロに通う」「誰よりも黒くいる」「パラパラ踊れる」「礼儀正しく、常識を守る」のほか、さらには「どこの誰よりもイカツメギャルでいる」という決まりもあったとか。 「盛れていないとダメなんです。パンフ作成の為にピンプリを提出するんですけど、盛れてない子は事前に衣装やヘアメイクをみんなでセットしてあげてました。サークルの方針にあった化粧になってないと『もっと強めにして!』と指摘されたりして」  ただ盛れていればいいというわけではないのだ。確かにきょんさんのアンジェリーク時代の写真をみると、現在の柔和な雰囲気からは考えられないようないかつさがある。ガングロ、目の周りや鼻筋に塗られた白いシャドウ、ボリュームのある派手な髪型といったスタイルは筆者の知る“ヤマンバ”ではあるものの、明るく親しみやすさのあるそれとはまた違う。 「いかつめな化粧をしてるから表面上だけでも強くいようと思えたんでしょうね。化粧をすると自信が持てました。陽キャになれたんです」

仲間との諍いや掲示板での誹謗中傷…きょんさんを変えた人生の転換期

きょん きょんさんは周囲の目を気にするタイプだったという。 「元々ネガティブな性格で、常に最悪のことを考えて生きちゃう人間なんです。街を歩いてて人がこっちを見てたりすると(私ってやばいやつなのかな)って気にしちゃう。めっちゃ勘繰ります。そういう性格だからギャル時代のブログは闇(病み)日記になってました(笑)」  そんなきょんさんにとってアンジェリークに加入したことが人生の転換期となった。“人に媚びない”というサークルの方針から受けた影響だけでなく、まるでビジネスマンのような仕事を任されるサークル活動、仲間同士のいざこざ、メディアへの出演、街を歩けば同世代のギャルから握手を求められる生活……そうした経験が彼女を少しずつ変えていったのだ。 「サークルにいた頃は色々ありました。仲間との間で問題が起きたこともあるし、『雑誌話』って掲示板にあることないこと書かれたこともあって。それでメンタルがやられてた時期もあったんですけど、そういう経験を重ねるにつれて強くなった気がします。くだらないことを書くやつなんてどうでもいいと思えるようにもなりましたね」  困難を乗り越えていくなかで、これからはひとりでもやっていけるという自信が芽生えていったそう。きょんさんは20歳でアンジェリークを卒業。同時にギャルスタイルもやめた。 「髪を暗くして化粧を薄くして。なんでだろうな……自然な流れでそうしてたんですよね。きっとそれまでは“盛る”ということにどこかで頼ってたんだと思います。卒業を決めたときにはギャルの見た目にならなくてもやっていけるという自信がありました」  卒業後、きょんさんは人材派遣のコールセンターでリーダーに就く。仕事にはやりがいを感じ、生活や将来への不安はなかったという。それもまたサークルで社会人スキルを培ってきたからかもしれない、ときょんさんは語る。
次のページ
幸せな生活の影で生まれた歪み
1
2
3
1994年生まれ。リアルサウンド編集部に所属後、現在はフリーライターに。『リアルサウンド』『日刊サイゾー』などで執筆。またnoteでは、クォーターライフクライシスの渦中にいる20代の声を集めたインタビューサイト『小さな生活の声』を運営している。

記事一覧へ
おすすめ記事
ハッシュタグ