日本人が間違えている中国へのイメージ
――奥さんの影響はありますが、そもそも中国関連のドキュメンタリーも撮っていたんですよね。現地で監督をやるにも土台があったと。
竹内:そうですね。NHKで「長江 天地大紀行」も撮っていて、「中国関連の番組と言えば竹内に任せれば大丈夫」ぐらいには思われていました。ただ、僕にとってみればまだまだ全然足りない。あまりにも広大な大地があるのに、住んだことも、話すこともできない。そのギャップを埋めたいっていうのもありました。
――住んでみて気付いた「ギャップ」はありますか?
竹内:おそらく、「中国に住んで怖い思いしない?」って思う人がいると思うんです。僕が住み始めた2013年なんて、反日デモがガンガン起きた直後のこと。そこから10年暮らしてますけど……日本人だから嫌な思いをしたことは、一回もないです。南京の人も、歴史を学んで、日本が過去に行ったことは良くないと認識している一方で、現代において何か言ってくることもなく。
――今聞いて、自分でも「へえ、そうなんだ」という気付きがありました。
竹内:「劇場版 再会長江」を作った目的の一つはそこです。10年前と比べて日本に中国人が増えたのに、私たちは彼らの生活を知らず、イメージだけで傷つけているところがあるのを払拭したかったんです。例えば「中国って空気汚いんでしょう?」とか、「独裁国家で何の自由もないんでしょう?」とか、結構言う人がいるみたいなんですよ。独裁国家で自由がなくて、閉じ込められている国だったら、ここまで経済が発展しないですよね。向こうの人は日本が好きで来てくれる人が多いのに、溝があるのはお互いの国にとって良くないんじゃないかと思うんですよね。
――竹内さんは中国で1000万人以上のフォロワーがいるという……本当にすごいことだと思うんですが、どうやって現在の立ち位置を獲得してきたんですか?
竹内:まずは「毎日日本のことを発信する」ということですね。先日、鳥山明さんが亡くなったニュースがありましたが、Weiboでは、ずっとトレンド一位の話題になっていました。こういうとき、情報を深く知るために検索するのは、日本人である僕のWeiboなんです。日本のニュースサイトを見に行くより手っ取り早い。そのために、常に日本のニュースの最新情報は仕入れるようにしています。
weiboでトレンド入りする「鸟山明去世(鳥山明死去)」の文字
――ただ、発信だけじゃそこまでフォロワーが増えないような気もするんです。他の理由もあるような気がします。
竹内:作品が受けていることもあるんでしょうね。「この作品はすげえ、この作品の監督ってどういう人なんだろう」っていう具合で流入してきてフォローされる。良い作品をポンと出すと、3ヶ月ぐらいはずっと僕のつぶやきを見てくれるんですけど、そこから段々と見る人も減ってくる。その辺りで、また新作を出して流入を増やす、そんなサイクルが出来上がっているのも大きいかなと思います。あとは、僕「竹内」というキャラクターが、従来の日本人と違うから受けてるっていうのも現地の人から言われました。
――どういったところが「違う」んですか?
竹内:物言いがストレートで、礼儀正しくない(笑)。中国人から見た日本人って、すごく礼儀正しいんだけど、腹の奥底では何を考えてるかわからないらしんです。そういうステレオタイプから外れた人物だから、面白いなと思われたんでしょうね。僕、学生の頃から、「お前は空気を読めない」って言われ続けてきて、「なんで空気って読まなきゃいけないんだろう」っていう疑問はずっとあったんです。22歳ぐらいのとき、中国にはじめて行って、空気って読まなくていいんだっていうことに気づいて、この国に興味が湧いた。正直、中国に住んでからの10年間の方が、全然楽に過ごせていますね。