仕事

中途採用の新人(28歳)を“ウソの悪評”で孤立させる先輩。優秀な若手を潰す問題社員の心理とは

回答:「いじめやパワハラの類型に入る行為」

大津章敬

大津章敬さん。社会保険労務士法人名南経営代表社員

大手士業系コンサルティングファーム・株式会社名南経営コンサルティング代表取締役副社長で、社会保険労務士法人名南経営の代表社員であり、全国社会保険労務士会連合会常任理事でもある大津章敬(おおつあきのり)さんに取材を試みた。 「これまでの労務相談の経験をもとに言えば、これに近い事例は程度の違いはあれ、多くの組織で見られるものと思います」と、大津氏は語る。 「今回の内田さんの溝口さんへの行為は、いじめやパワハラの類型に入ると私は捉えています。私は日頃、社内外で労働事件の裁判例をもとに社会保険労務士たちと学習会をしています。その場でも話すことですが、パワハラ事件で実際に裁判に発展するケースは決して多くはなく、ましてや判決にいたるのはパワハラ事件全体からすればごくわずかな特殊な事例であると考えています。  ですから、裁判例をもとに、『これがパワハラ、これはパワハラではない』と捉えると、今の企業社会の実態に即していないのではないか、と思うのです。現実の職場におけるパワハラ問題は、裁判例で示されているようなケースよりも幅広く捉える必要があります。それが、労使間のトラブルを未然に防ぐことになるのです。  たとえば、溝口さんが出社することに苦痛を感じたり、職場で孤立させるように仕向けたり、会社や部署、周囲への不信感をつのらせるようにすることはいずれも職場における問題行動であり、パワハラと捉えることができると思います。この事例は、各社でパワハラの研修を行う時に事例として取り上げてもいいようにも感じました」

解決には「先輩や上司」の指導が必要

 そして、大津氏は「実際に溝口さんの言動や仕事に問題があるならば、先輩や上司が改めるように指導することは必要です」とも付け加える。 「しかし、内田さんは溝口さんの問題点について、指導して解決に導こうとしているのではなく、事実ではない悪意ある噂を流すことで、職場に不信感を募らせるような言動を繰り返しています。結果として、溝口さんの居場所をなくすことにつながっています。これは、指導とは言いません。  まずは、双方で解決に向けて話し合うべきですが、この状況では難しいのかもしれません。溝口さんが解決をしたいと望むならば、上司や総務、人事など然るべきところに相談へ行くことを考えてもよいのではないでしょうか。上司もこの状況を把握しているのであれば、溝口さんから相談を受ける前に、解決に向けて動くべきでしょう。  上司や総務、人事などが内田さんと面談をして事実関係や事情を確認のうえ、問題行為と認識できる場合は、注意指導などをして早急に改善していくべきです。その後も繰り返されるならば、さらに注意指導をします。それでも続く場合は、厳重注意となります。なおも一向に改善されない時は、処分の対象にもなりえます。最終的には組織と他の従業員を守るために、退職勧奨をせざるを得ない時もあるかもしれません
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先輩がパワハラをする「真意」は
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ジャーナリスト。1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006年より、フリー。主に企業などの人事や労務、労働問題を中心に取材、執筆。著書に『悶える職場』(光文社)、『封印された震災死』(世界文化社)、『震災死』『あの日、負け組社員になった…』(ダイヤモンド社)など多数
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