ライフ

「謎の女」にまつわる都市伝説の真相を確かめに、池袋駅のトイレへ。そこで待ち受けていた恐ろしい結末は……

おっさんは二度死ぬ 2nd season

池袋駅のマナさん

 いにしえのインターネットとはアンダーグラウンドであった。  すこし不思議で怪しくて非合法な臭い。あの頃のインターネットはそんな世界で、どこかで必ずそれに引っかかるようになっていた。表には出せないような裏の顔、犯罪、暴力、グロ、ロア、UFO、UMAなどなど。インターネット黎明期においてはその裏と表の境界線が曖昧だったようにも思う。  もうずいぶんと前の話になるけど、そういったネットの暗部みたいものに興味を持った僕は、とある都市伝説サイトに行き着いたことがあった。アンダーグラウンドに夢中になるのも、都市伝説に夢中になるのも、はしかのようなもので誰もが一度は通る道だ。  おそらく絶望めいたものを心のどこかで望んでいたのだと思う。これらの都市伝説には日常では感じられないもので、どこか絶望めいたものがあって、なんだか妙に心惹かれたのだ。  インターネットに陳列された都市伝説たちは魅力的だった。口裂け女にはじまり、フリーメイソンによる陰謀論、地球滅亡の日、マヤの終末予言までズラリとならんだ都市伝説の話を眺めていたのだけど、そのなかで妙に気になるものがあった。  それが「池袋駅のマナさん」だ。いま検索をかけてみてもまったくヒットしないので、本当にそんなものがあったのかと自分の記憶を疑いたくなるけど、当時は夢中で読んでいたので、確かに存在していたのだと思う。

「池袋で会おうよ」と言ってくる謎の女・マナ

 その「池袋駅のマナさん」のエピソードをかいつまんで説明するとこうだ。  とあるインターネット掲示板に「池袋駅で会おうよ」と書き込みがされることがあるらしい。その書き込みは決まって真夜中2時になされ、使い捨てのメールアドレスや、SNSのアカウントが書き込まれているようだ。この書き込み自体は、当時としてはそう珍しくなく、ありふれたものだった。  その連絡先にメッセージを送ると、しばらくはなにも音沙汰がないのだけど、数日すると返事が来る。「池袋駅で会えませんか?」その言葉と共にけっこうエロい雰囲気のことが書かれていて、エロスな展開へと誘う感じのことが書かれている。当然、そのエロいメッセージを受け取った殿方は喜び勇んで池袋駅へと向かうことになるわけだ。  相手の名前は「マナ」だ。エロい画像もバンバン送ってくる。その画像があまりにエロいので、みんな「何らかの詐欺かも」と疑いつつも、股間をパンパンに膨らませて池袋駅へと向かう。  池袋駅に到着すると、ある出口に向かうように指示される。その出口は、出てちょっと歩いた場所にホテルがあって、そのホテルのトイレを指示される。そこの個室の中で待機しているとエロい女がやってきてエロいことをしてくれるという算段だ。  ここまで聞くと、単なるエロい体験談なのだけど、ここから少し不可思議に様子がおかしくなるらしい。個室で待っていると明らかに人の出入りが激しくなるそうだ。もともと、人目につかない場所を指定されているので、そこまで頻繁に人が出入りするトイレではない。けれども、とにかくガヤガヤと人が出入りする物音が聞こえてくる。
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個室を開けてしまったら最後……
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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