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「謎の女」にまつわる都市伝説の真相を確かめに、池袋駅のトイレへ。そこで待ち受けていた恐ろしい結末は……

マッチングアプリにハマったおっさんの初アポ

 そこから20年あまりが過ぎ、まさか最近になって「池袋駅のマナさん」の名前を聞くことになるとは思いもしなかった。  マッチングアプリに熱中する遠山さんというおっさんがいる。その遠山さんが、最近になって知り合った女性がいる。そんなホットな話題から始まった。なんでもその女性はかなり積極的で、エロい感じがして、もうエロスの権化みたいな感じらしい。  あまりにできすぎた話に、それは詐欺では、美人局なのではと仲間たちが揶揄したけど、とうの遠山さんは「世の中にはこういうエロい女がいるってことよ」と訳の分からないことを言って得意気だった。 「こんどさあ、会うことになったんだよお、池袋でさ」  池袋でネットで知り合ったエロい女に会う、それは遠くに置き忘れてきた僕のあの記憶を思い起こさせるものだった。 「すいません、その女の名前ってなんていうんですか?」  僕の質問に遠山さんは満面の笑みで答える。 「マナさ」  まさか。あの都市伝説が現実に僕の目の前に現れた瞬間だった。 「僕の知ってる怖い話によく似ている。まあ、都市伝説の類なんですけど」

よりにもよってあのマナとアポるだなんて

 池袋駅のマナのエピソードを延々と話し、できれば池袋に行かない方がいいとまで提案した。なにせ、そのルートに入ってしまうと、どんな分岐を選択しても遠山さんは発狂するか消息不明になるしかないのだ。 「いやいや、そんな怖い展開になるわけないだろ」  発狂するか消息不明になるしかない崖っぷちとは思えないほど遠山さんは余裕の表情だ。仕方がないので、遠山さんが「池袋のマナ」と会うという約束の日、僕も一緒に行くことにした。遠山さんのことが心配だったのだろうか。たぶんそんなことはなくて、単にあの日に読み漁った都市伝説、その決着を見届けたかっただけなのかもしれない。 「いいですか遠山さん。もし、このマナが僕の言っている都市伝説の女なら、池袋駅の〇〇口に行くように連絡してくるはずです。そして、そこから〇〇ホテルと誘導されたらほぼ確定です。都市伝説のマナです。発狂か消息不明です」  いよいよ、池袋駅に到着し、遠山さんがマナに「着いた」とメッセージを送る。返事がすぐにやってきた。 「ちょっと電車が遅れてます。先に〇〇口の方まで移動していてください」 「ほら!〇〇口ですよ!」  マナはしっかりとその出口に誘導してきた。やはりあのマナに違いない。 「ぐ、偶然だよ」  強がる遠山さんと共にその〇〇口へと移動する。
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その女は、しっかりあの池袋のマナだった
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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