ライフ

「謎の女」にまつわる都市伝説の真相を確かめに、池袋駅のトイレへ。そこで待ち受けていた恐ろしい結末は……

個室を開けてしまったら最後……

あ おまけに、その中の何人かはドアをノックしてくるようだ。 「すいません。ちょっと緊急でして。はやく出てもらえませんか?」  かなり緊急な感じで切羽詰まった感じで言われる。ただ、こちらも出るわけにはいかない。エロい展開が待っているのだ。緊迫した誰かが諦めたかと思えば、また別の人がドアを叩いてきて威圧的な感じで早く出るように言ってくるらしい。手を変え品を変え、次々と人がやってきて個室から出るように言ってくる。あまりの事態にだんだん怖くなってくるようだ。  ここで、言われるがままに個室から出た人は、その後に発狂するか消息不明になるか、こういった伝承にありがちな最期を迎えるらしい。  この展開に不気味さを感じて頑なに個室から出ないようにしていると、訪れる「なにか」はどんどん暴力性を増していってドアが壊れるかと思うほどに激しく叩いてくる。そして、いよいよドアを蹴破ってきそうな感じなると、ピタッと静かになる。  すると、先ほどの暴力的なノックとは対照的に、コンコンと小さくノックされる。 「わたし、マナだよ」  男子トイレには似つかわしくない、かわいい声でそう言われるらしい。ここで、ついにエロい展開が来たかと喜ぶ人はいない。ここまでの展開は明らかに異常で恐怖を感じるものだった。完全にドアを開けてはいけない“なにか”がやってきている。 「ネットで約束した人だよね?」

そこからは、身の毛がよだつ恐怖の展開に

 ドアの向こうの女性は誘うように語りかけてくる。ここで怖くなってドアの下の隙間から覗き込むと、足が見えないことに気が付く。明らかにドアの前から語りかけられているのに足が見えない。あまりのことに血の気が引く。この世のものではない何かがきている。 「違います。違います。人違いです!」  叫ぶようにして拒否する。 「そんなことないよ。ネットで約束したよね」 「ちがいます。ちがいます」  そんな押し問答が続いた後、突如としてドアの外の気配がなくなる。助かったのかと胸をなでおろし、ふっと上を見上げると、上の隙間からこの世のものとは思えない“なにか”が覗き込んでいてこう言うらしい。 「やっぱりネットで約束した人じゃん」  その後、その男性は発狂するか消息不明になるか。そんな話だった。  この都市伝説を聞いたとき、最初のノックに反応しても発狂するか消息不明だし、最後までドアを開けなくても発狂する消息不明、助かるルートがないことに驚いたのだ。どうやっても助かるルートがない理不尽な展開、どうあがいても絶望。こんなことってあっていいんだろうか。  もうこの「池袋駅のマナさん」のエピソードを見つけることはないのだけど、その妙にエロい感じと救いのない感じが強烈に印象に残ったものだった。
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マッチングアプリにハマったおっさんの初アポ
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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