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サウナは恐ろしい。命を失う危険がある。しかし、それよりも尊いものを僕は既に失くしていたのだった

おっさん2おっさんは二度死ぬ 2nd season

デンジャラスサウナ

おっさんの嗜みといえばサウナである。  一時期は爆発的なブームを見せ、それこそ若い人などもこぞってサウナを楽しんでいたけど、昨今では棲み分けができてきたように思う。  都内にも増加してきた、オシャレなサウナ、いわゆるちょっと意識高い感じのサウナに若者たちが移動し、従来の泥臭いサウナにはストロングスタイルのおっさんどもが残ったように思う。そう、泥臭いサウナは我々おっさんの手に返ってきたのだ。  さいきん行きつけのサウナにおいては、その傾向が顕著で、もともと男性専用サウナということもあるのだろうけど、利用者の8割超はおっさんという驚異の数字を叩き出している。ただ、ふと思うのだ。おっさんとしてサウナって危険なんじゃないかと。  サウナの熱気に耐えて水風呂、最高。そして外気浴、最高。これらのサイクルは本当に極楽だ。けれども、稀に危ないシーンがある。以前はサウナの中でおっさんが倒れてしまい、そのまま従業員に運ばれていったことがあった。それからしばらくして救急車のサイレンが聞こえたので、僕らおっさんはサウナ内で震え上がったものだ。  他にも、最近あまり見かけなくなった常連さんについて尋ねてみると、あいつは死んだ、みたいなことを言われることが増えた。サウナの常連、なんか死亡率が高い。  もしかしてサウナって体に悪いんじゃないだろうか。  

気をつけていてもやはりブラックアウトは起こる

 そのへんの医学的な真贋はちょっと自分には分からないんだけど、僕自身も、サウナにおいて危ない場面が増えてきた。サウナに入り、水風呂、最高、外気浴、最高、となるのだけど、その外気浴のシーンで意識を失うことが増えてきたのだ。これ、ちょっと冷淡に書いてるけどよく考えたら普通に危険だな。意識を失うって。  サウナ上がりに自らの意思でちょっと眠るかとなっているのなら問題ないけど、うわー最高だぜーと外気浴しているシーンでブラックアウトするのだ。気が付くと1時間くらい経過していて、周りの客がごっそり入れ替わって知らない人だらけになっている(サウナで時間を共にするとちょっと知り合いみたいになる)。落ち葉とかが裸体の上に3枚くらい乗っている。なんだかよく分からないけどこれは危険な気がする。  だから最近では意識を失わないよう、サウナに行く頻度を減らしたし、サウナ水風呂外気浴の一連のセットを3回繰り返しているところを2回に減らした。さらに1リットルの巨大ペットボトルを持ち込んで過剰なまでに水分を摂取するようにしているし、そこまでしてもブラックアウトするという場合に備えて、倒れて怪我するといけないので、外気浴スペースでは寝転べるタイプの椅子を選択するようにした。  それでもたびたびブラックアウトを起こすので、やはりまあ、サウナには何らかの危険性があるのだろう。  そんな折、サウナの常連仲間から変な噂話をきいた。どうやらピンチケの間で僕が変なニックネームで呼ばれているらしい。
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若者を揶揄する言葉「ピンチケ」
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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