ライフ

サウナは恐ろしい。命を失う危険がある。しかし、それよりも尊いものを僕は既に失くしていたのだった

記憶の糸を辿ると、うっすらと思い当たる節が

 キャンドル・ジュンってあの、広末涼子さんの旦那さんだった人だよね? 見た感じも僕とまったく似ていなくて、どちらかというとシェフのほうに似ているんですけど、なんでそんな僕にキャンドル・ジュンさんの名前が付けられてるんだ。  まあでも、懲役4年とかの不名誉なニックネームに比べたら、ぜんぜんいいんだけど、そんな要素ないのになあなどと困惑していたら、ある光景がフラッシュバックするかのように思い出された。  その記憶はあまりにも朧で、もしかしたら夢だったんじゃないかって思っていた。けれども確かに「キャンドル・ジュンや」と言われていた。その記憶があるのだ。  それは、1か月くらい前のことだった思う。相変わらずサウナに入って水風呂最高! 外気浴最高! していたらやっぱりブラックアウトした。その日のブラックアウトはけっこう深くて、2時間くらいは気を失っていたと思う。

そんな苦い経験から考えついた策

 ふと目が覚めて思った。仰向けに寝転がるタイプの椅子で外気浴して意識を失っていたのだけど、2時間ずっと局部を丸出しで気を失っていたのだ。冷静に考えると、不特定多数の人が行き来してプライベート空間とは言えない場所で2時間も局部を丸出しにすることはまあ、正気の沙汰ではない。僕の局部もその人生、いや局部生、いや違うな、性器生において、2時間も無防備に他人の目に晒されたのは初めての経験だろう。きっと戸惑ったことだと思う。  ということで、そこからはブラックアウトを見越して少し大きめのタオルを局部にかけて外気浴をすることにした。これなら局部も安心だ。さすがに丸出しで気を失うのは紳士としてのエチケットを欠く。  ただ、その日は水分補給用に持ち込んでいる水のペットボトルが大きかった。普段は500mlか1Lのものだったのだけど、売り切れていたので近くのスーパーで買った2Lのものを持ち込んでいた。  中身を残してしまうと大変なので、なんとか「水分はどんなに摂っても摂りすぎるということはない」と言い聞かせながら2Lの水を飲み干した。
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仇となったのは入念なブラックアウト対策だった
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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