更新日:2024年07月09日 09:32
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都知事選3位で落選…蓮舫氏を“15年以上取材した記者”が、出馬表明の時点で「勝てない」と直感していた理由

「辞めろ」コールを行う人たちの正体は…

小池候補の街頭演説に乗り込んだのは、つばさの党だけではありません。選挙戦の中盤からは「辞めろ」コールをする人たちも現れるようになりました。「辞めろ」コールをしていた人たちの主張は「公約を達成していない」といった小池都政8年の実績を疑問視する声が多く見られましたが、そのほかにも「自民党の支援を受けている」ことを問う声も見られました。 自民党は今回の都知事選でどの候補にも肩入れせず、自主投票という立場を明らかにしています。それは表向きの姿勢で、自民党は選挙の手伝いから業界団体の取りまとめを担当しています。 それが小池候補の得票につながっていることから、小池候補は自民党のステルス支援を受けていると批判されていたのです。 それら「辞めろ」コールをした人たちを取り上げたネットニュースを読むと、対立候補を支持する人たちによる妨害といったニュアンスで書かれている記事もあります。また、小池候補の選挙を手伝っている都民ファーストの会の議員のXなどにも似たようなポストがありました。 筆者も「辞めろ」コールの現場に居合わせ、「辞めろ」コールをしていた人たちからも話を聞きました。彼ら・彼女らは、必ずしも対立候補を支持していた人たちではありませんでした。 なぜなら、「辞めろ」コールをしていた人の中には、とある宗教団体の幹部や蓮舫候補の街頭演説でも「辞めろ」コールをしていた人がいたからです。 また、YouTuberなどもいて、特に特定の政治思想があるというわけではなく、PVが稼げるといった目的で「辞めろ」コールの輪に加わっていた人もいたようです。つまり、小池候補を批判する目的が一致しただけの、偶発的な集まりだった可能性も高いのです。

広がっていった「一人街宣」の取り組み

こうした小池候補の街頭演説で「辞めろ」コールをする人たちが出現する一方で、今回の都知事選では投票率を上げようと呼びかける一人街宣という新しい動きが見られました。 一人街宣は、駅前や人通りの多い場所にプラカードなどを持って立つ政治行動です。投票に行くことを呼びかける一人街宣は、必ずしも声を出すわけではなく、黙ってプラカードを掲げて立つだけの人もいます。その行動形式は人それぞれで、特にやり方が定められているわけではありません。 もともと一人街宣は杉並区の岸本聡子区長が始めた取り組みで、その目的は投票率を上げることでした。岸本区長が都知事選において蓮舫支持を打ち出したことで、一人街宣は蓮舫支持者のアイコンになって一気に広がっていきました。一人でプラカードを持って駅前や街に立つ一人街宣は、気恥ずかしなることも臆してしまうこともあるでしょう。とても勇気がいる行動です。 私たちは政治に無関心で生きることはできても無関係で生きることはできません。であるならば、投票という政治参加を呼びかける一人街宣は決して恥ずべき行動ではありません。 蓮舫候補は当選できませんでしたが、市民間で広がった一人街宣という現象が広まったことを踏まえると、決して蓮舫候補が都知事選に挑戦したことは無駄ではありませんでした。 前回に比べて、小池候補にとってハードな都知事選になりましたが、なんとか相手を振り切りました。一方、敗れた蓮舫候補は想定外の3位という結果になり、政治の舞台から降りることになります。 蓮舫候補は街頭演説で「将来を諦めない都政」を訴えて、若者支援を打ち出していました。蓮舫候補は56歳。小池候補が都知事選に初挑戦した2016年は63歳でした。再チャレンジを待ちましょう。 <取材・文・撮影/小川裕夫>
フリーランスライター・カメラマン。1977年、静岡市生まれ。行政誌編集者を経てフリーに。首相官邸で実施される首相会見にはフリーランスで唯一のカメラマンとしても参加し、官邸への出入りは10年超。著書に『渋沢栄一と鉄道』(天夢人)などがある Twitter:@ogawahiro
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