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“テレビから消えた”ウーマン・村本大輔。ニューヨークに拠点を移した今、日本に思うこと

被災地や沖縄で感じたこと

――それから、心境に変化が生じたとのことでしたね。 村本:もともと、ネタを作るのは好きだし、面白い話をするのも好きです。ただ、取材に行くうちに、テレビに出るためにお笑いの仕事をすることに気持ちが乗らなくなってきたというか…。  例えば、雛壇で「相方が天然で相方がアホなんですよ」と先輩に言ったり、アイドルの女性に「本当は男と遊んでるんちゃう?」と突っ込んでみたり。相方の話や恋愛の話など、身内同士のいじり合いをした後、取材で知り合った人と話すと違和感を覚えるようになってしまって。  ある日、サウナに入ってテレビを見ていたら、仕事仲間の芸人と一緒に自分が出ていました。自分はお笑いを真剣にやっていましたが、テレビの中の自分が消耗品というか、流れる景色の一部のように思えてしまって。少し恥ずかしかったですね。  そこから真剣に「本当に面白いことは何か」を考え始めました。例えば、原発をネタに取り入れることは原発反対の意思を示したわけではないです。ムカつく芸人に嫌なことを言うのと同じで、原発のことも「ちょっとおかしいんじゃないか」と皮肉る感覚です。それで人がスカッとしてくれて笑ってラクになってくれたら、という思いがありました。

自分の正義や感受性に支配されていた

ウーマンラッシュアワー村本大輔――活動の拠点をN.Yに移し、日本のテレビ出演を辞めてわかったことはどのようなことですか? 村本:自分のネタをノーカットで全部やれるようになりましたね。ネタに費やす時間もとても多くなりました。常にネタを考える時間になったというか…。ネタの数もめちゃくちゃ増えました。  寂しくなったというのも大きいです。日本のテレビに出演する生活をしていると、常に自分が浮いてるような感覚がありました。自分の考えていることを発言したり、漫才のネタにすると、「Twitter(現X)がざわついていますよ」と言われてしまう。  テレビでも「あいつはガチだ」と言われて。「政治的な発言をする芸人」というレッテルを貼られるというか。そうか、そう見られていたのか、と。  それまでは、自分のキャラクターをうまいことプレゼンして「ゲスくずキャラ」みたいな感じで、テレビで売り出してパフォーマンスをしていました。でも、そのレッテルに気が付いてからは自分の正義や感受性に支配されるようなTweetが多くなってしまって。良い見られ方はしていないと思いました。
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先輩・大竹まことからの「謝罪」
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ライター、合同会社インディペンデントフィルム代表社員。阪南大学経済学部非常勤講師、行政書士。早稲田大学法学部卒業。行政書士としてクリエイターや起業家のサポートをする傍ら、映画、電子書籍製作にも関わる。

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