役所広司が考える“家族の絆”「血のつながりよりも相手の痛みを感じられる関係」
陶器職人とその息子、そして隣町に住むブラジル人との交流を通して家族の絆を描いた映画『ファミリア』が公開されています。舞台のモデルは窯業が有名な瀬戸市と実際にブラジル人が多く住む豊田市の保見団地。ブラジル人役やエキストラは在日ブラジル人を起用し、国際色豊かな作品となっています。今回は、若いブラジル人たちに温かく接する陶器職人を演じた主役の役所広司さんに撮影中に感じたことや作品に寄せる思いについて聞きました。
<あらすじ>
山里にひとりで暮らす陶器職人の神谷誠治(役所広司)のもとに、一流企業のプラントエンジニアとしてアルジェリアに赴任中の息子・学(吉沢亮)が、婚約者ナディア(アリまらい果)を連れて一時帰国する。学は会社を辞めて焼き物を継ぐと宣言するが、誠治は2人の将来を案じて反対する。一方、隣町の団地に住む在日ブラジル人の青年マルコス(サガエルカス)は、半グレ集団に追われていたところを助けてくれた誠治に亡き父の姿を重ね、焼き物の仕事に興味を持つように。そんな中、3か月後に帰国を約束しアルジェリアに戻った学とナディアをある悲劇が襲う――
――役所さんは本作以外にも『バベル』(’06)など、外国人の俳優さんやスタッフが参加している作品に出演していますが、映画製作の中で「国境を越えて人と人とがつながる」ということを感じたことはありましたか。
役所:映画製作の現場は映画好きが集まっています。ハリウッドの資金の潤沢な映画も日本の低予算の映画も、撮影現場に行くと雰囲気は変わらないものなんです。
国によってスタッフの人数が多いこともあれば少ないこともあります。例えば、アメリカの映画は「この人何の仕事しているのだろう」と思える程に人がたくさんいるので、親しくなれるのは限られた人数になります。
ちなみに、『バベル』の時は本当に現場に人がいませんでした。アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督が、その場にいる必要のない人間がいることを嫌がったこともありますが、撮影現場に行くと、カメラマンと照明スタッフなど必要最低限のスタッフが数名で他の人はいませんでした。その時はやはりコミュニケーションは密になりましたね。一緒に物語を作る時に、国境は関係ないと感じています。
『ユリイカ』(’01)ではカンヌ映画祭にも行きました。観客の人たちは3時間以上もある長い映画を見てくれるのだろうかと最初は不安でしたが、最後まで見続けてくれました。そして、結果的に国際批評家連盟賞とエキュメニック賞を受賞しました。まだ、40代でしたがその時も映画は国境を越えるとつくづく感じました。
そして、今回の撮影では、オーディションを兼ねたワークショップで選ばれたブラジル人俳優たちの成長に驚きました。特にマルコス役のサガエルカス君は、映画の出演はもちろん、俳優の仕事も初めてだったんです。
でも出演が決まってからは、監督が本当に丁寧に指導していました。そして、サガエルカス君はもちろん、他の俳優たちもそれに応えて、全く演技経験のない人だとは思えないぐらいに芝居ができるようになっていました。それは本当に俳優になりたいと思っているからこそできること。監督も彼らをきちんと見守って、みんなで一丸となって映画作りをしていました。やはり今回も国境は感じませんでしたね。
映画は国境を越える
ブラジル人俳優たちの成長に驚き
ライター、合同会社インディペンデントフィルム代表社員。阪南大学経済学部非常勤講師、行政書士。早稲田大学法学部卒業。行政書士としてクリエイターや起業家のサポートをする傍ら、映画、電子書籍製作にも関わる。
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「ファミリア」
1月6日(金)新宿ピカデリーほか全国公開
出演:役所広司、吉沢亮、サガエルカス、ワケドファジレ、中原丈雄、室井滋、アリまらい果、シマダアラン、スミダグスタボ、松重豊、MIYAVI、佐藤浩市ほか
監督:成島出
製作委員会:木下グループ フェローズ ディグ&フェローズ
制作プロダクション:ディグ&フェローズ
配給:キノフィルムズ
©︎2022「ファミリア」製作委員会
公式HP
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