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「真面目な話をすると、いつも喧嘩になって…」ウーマン村本大輔が語った“亡くなった父への想い”

 スタンダップ・コメディに挑戦するウーマンラッシュアワーの村本大輔さんに3年間密着したドキュメンタリー『アイアム・ア・コメディアン』が全国で公開中だ。
ウーマンラッシュアワー村本大輔

ウーマンラッシュアワーの村本大輔さん

 映画では活動の拠点をNYに移した村本さんに密着、福井のご両親との交流なども描かれ、話題に。今回は、前回のインタビューに引き続き、アメリカで一番ウケたネタや今後の目標などについて聞いた。

スベっても堂々としているアメリカ人

――海外で一番ウケたネタはどのようなものでしたか。 村本大輔(以下、村本):家から徒歩1分のところに、ブラックキャッツというカフェがあって、そこで週3、4回ライブをやらせてもらっています。ソーニャという女性にお金を渡すと5分間ネタをやらせてもらえるんです。  1個のネタを英語で覚えるのにかなり時間が掛かり、大変です。でも言いたいことあったら言わなきゃ、と思って毎日がんばっています。それで気になっていたことがあって。なんでアメリカ人はずっとスベってるのに、爆笑を取っている顔で堂々としていられるのかと。自分だったら声震えてきちゃうよ、と思って。  逆に爆笑を取った日でも手が震えちゃいます。ひょっとしたら駄目だったかな、とか、たまたまお客さんが温かっただけかな、とか、色々反省しちゃうんです。ところが、どんなにスベってても、アメリカ人の、特に白人のマッチョな男って「情熱大陸」の最後の時みたいな感じで「コメディっていうのはね」みたいな感じで偉そうに語るんですよ…。  そのことがずっと気になってて。それでそれを全部ChatGPTで英語にして怒り狂うように読み上げました。そうしたら、白人以外の、特に、女性たちが「よく言った!」と、めちゃくちゃウケてくれました。それが海外で一番ウケたネタですね。  やはり、アメリカの白人男性のマッチョな感じにみんな辟易していたのかもしれません。根拠もなく自信に満ち溢れているのはアメリカ人同士も気になっていたのではないかと。それでも僕はまた「この大ウケもお客さんが優しかったからなのか…」と反省してしまうんです。

「できない」と言われ続けて今

ウーマンラッシュアワー村本大輔――なぜ反省ばかりしてしまうのでしょうか。 村本:これは福井県が作った自分なのかもしれません。僕が生まれ育ったのは、原発のある大飯郡おおい町で人口が当時6000人ぐらいの小さな町。その小さな町の中の山間にある集落にいました。気質というのでしょうか、北陸の人は控えめな人が多く「常にできない」ということを刷り込まされて育ちました。東京の人に比べて謙虚というか…。  大きい夢を語っても鼻で笑われるような雰囲気が地元にはありました。自分の自己肯定感は常にボロボロ。福井にいた頃、「お笑いやりたい」と言ったら「あなたよりすごい人はもっと山ほどいるから」と言われました。  デビューしてテレビに出るようになって「テレビに出たら褒められるのかな」と思ったら、「すぐ消えるから」と言われて。地元に帰れるように実家は残しておいたほうがいい、ともアドバイスされていましたね。アメリカ行きも、その年で、その英語力で絶対「ムリムリ」と言われました。 ――「できない」と言われ続けていると「できる」と思うことは難しくなってしまいますよね。 村本:はい。そうやって生きてきたので、THE MANZAIで優勝した今でも自分の自信はゼロです。  いったい何が無理なのかはわかりませんが、とにかく「無理なんじゃないか」と思う悪魔が自分の中に住んでいます。その悪魔が、今まで必死に築き上げてきたものをハンマーで「バーン」とたたき割る。  賽の河原を積み上げるというか。積み上げてまた悪魔が来て積み上げたものを壊して、それでまた積み上げる、ということの繰り返しです。福井のコンサバティブな空間が作った呪いでしょうか…。
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「恥ずかしい」を捨てて
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ライター、合同会社インディペンデントフィルム代表社員。阪南大学経済学部非常勤講師、行政書士。早稲田大学法学部卒業。行政書士としてクリエイターや起業家のサポートをする傍ら、映画、電子書籍製作にも関わる。

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