「IQは68〜75程度だった」“境界知能”の23歳女性が“人に裏切られても”挑戦し続ける理由
境界知能と呼ばれる人々がいる。具体的には、知能指数(IQ)が70以上85未満の人たちだ。一般に、IQ70未満の場合は知的障害とされ、必要な支援につながることが多い。だが境界知能の場合、学生時代などに学習面などにおいてかなりの苦労をするものの、健常者と同じ学級にいるため、「怠け者」「バカ」などと蔑みの対象になることがあるという。
現在、とある企業の倉庫で働きながら、境界知能当事者としてYouTubeチャンネルを開設しているえりかん氏(23歳)への取材を通して、その苦悩と不安に迫る。
NHK『ケーキの切れない非行少年』などへの出演経験もあり、メディア露出も多いえりかん氏もやはり、学習において比較的初期に躓いている。
「小学生の頃から、自分だけが努力をしても学習成果が出ないことは悩みでした。教師のなかには『(点数が悪いのは)努力が足りないからだ』と叱責してくる人もいて、自分を責めたこともあります。毎日3、4時間勉強しても人並みの点数が取れないため、気が滅入ってしまいました。社会人になった今でも、スーパーなどで1個あたりの商品をどちらが得か比べるなどの計算が素早くできません」
思春期になると、ワンテンポ遅いえりかん氏に対して、周囲は厳しくなっていった。
「一例ですが、部活動でペアを組んでやるものなどは、組んでくれる人が誰もいなくて独りぼっちだったりしましたね。いわゆる“ハブ”という状態です。学生生活を一言でいえば、浮いていたと思います。浮いている人間はどう扱われても文句が言えないような空気感があって、好意を寄せていた相手のことを級友に話したら、それが数日後には広まっていたこともあります。思い返すと、当時は『生きていてもいいことがないなぁ』といつも考えていました」
周囲との“ずれ”を意識しながら、さりとてそれを是正する術を持たないことに焦る日々。えりかん氏は不登校になり、通信制の高校へ進学した。
驚くのは、えりかん氏自身が境界知能であることを知ったのがつい数年前だということだ。
「これまでお話してきた通り、常に学習面において悩みは抱えていたものの、知能指数を調べることはしなかったんです。もしかすると自分には学習障害があるのかもしれないと思って、いくつか書籍を買って読んだこともあります。しかしある日、勇気を出して受診することを決めました。さまざまなテストを受けましたが、概ね数値は68〜75程度だったと思います」
「努力が足りない」と叱責されたことも
ハブられてしまった学生時代
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ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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