現役時代から資格の取得や人生の目標を考えたほうがいい
――現役のセクシー女優に向けて、セカンドキャリアで成功するためのアドバイスはありますか?
吉岡:本当にセカンドキャリアを考えているのであれば、資格を取ったり、セクシー女優以外の人生の目標を立てたりするのが良いと思います。
――それから、お金の問題も大きいですよね。セクシー女優は普通のサラリーマンよりも高収入を得られるので、引退後にそのギャップに苦しむこともあるのではないですか?
吉岡:私は現役時代のギャランティーをあまり使わず、貯金をしていました。ですので、今でも生活費は変わらず、特に困ることはありません。世の中の人と同じで、たまに贅沢な食事をするくらいで、無駄遣いもせず、高額な家賃のところにも住んでいないので、今でも普通にやっていけています。
――そういう感覚は大事ですね。金銭的なギャップもなかったということですね?
吉岡:そうですね、現役時代より少し節約しようかなと思うことはありますが、大きく変わることはないです。
――このクリニックに入ったきっかけは何ですか?
吉岡:以前、別の会社で性感染症関連の仕事を手伝っていたんです。その時、自分のキャリアにも合っているし、追求していきたい分野だと感じました。そこで、正しい知識を広めていきたいと思っていたところ、このクリニックを紹介していただいたんです。
――なるほど。セカンドキャリアの話はとても参考になりました。では、再び性感染症の話に戻りますが、アダルト業界における性病検査の問題点や課題はありますか?
吉岡:性感染症というのは次々と新しい種類が出てくるんです。その理由の一つは、性感染症を専門的に研究する医師があまり多くないからだと思います。性感染症は命に直結しないことが多いため、研究への関心が薄れがちなんです。医師たちは命にかかわる病気の研究を優先することが多いんですよ。
三並医院長:そうなんです。国の資金も命にかかわる病気の研究に多く使われます。性感染症に関しては、日本の場合、保険診療の範囲内でできる検査が限られています。具体的には、症状がある場合に限られます。さらに他の性感染症に同時にかかっている可能性があっても、合わせて調べることができないものが多いんです。
吉岡:そういう背景があるので性感染症に関する研究や治療が進みにくいんです。新しい性感染症が発見されても、命に関わる病気でない限り、注目を集めないことが多く、そのため、新しい性感染症が増えても、それが注目されずに見逃されることが問題だと思っています。例えば、梅毒やHIVのような有名な性感染症は広く知られていますが、「尖圭コンジローマって知ってる?」と言っても、多くの人は知らないでしょう。
――新しい性感染症が発見されるのは、偶然に近いのですか?
三並医院長:いろいろなケースがあります。「多くの患者が似たような症状を持っているが、原因が分からない」という場合や、少数でも深刻な症状がある患者が出て、それをきっかけに研究が進むことがあります。ただ、性感染症という理由だけで軽く見られてしまうことが多いのも事実です。
吉岡:そうした背景のせいで、性感染症に苦しんでいる人たちが社会から見過ごされてしまうことも問題だと感じています。
――例えば、アダルト業界は映画やテレビと同じ映像系にもかかわらず軽視されがちですが、性感染症内科も一般の医療と比べて軽視されているのでしょうか?
三並医院長:確かに、医師の中でも救急医療はかっこよく見られ、性感染症内科や在宅医療は地味だと見られることがあります。
――その意味では、アダルト業界と性感染症内科のイメージには共通点がありますね。とはいえ、性的な健康管理は日常生活において重要です。
吉岡:はい、世間から偏見のイメージは確かに感じています。だからこそ、私たちは正しい情報を発信していく必要があると思いますが、私のような前職がある人間が発信しすぎると、「そんなに遊んでいないから大丈夫」と言われてしまうこともあるんです。そこが一番の課題だと思います。性感染症は誰にでも関係のある話なのに、アダルト業界や遊んでいる人たちだけに関係があると思われてしまうのです。
――確かに、「性感染症=アダルト業界、風俗関係者の病気」というイメージが根強いですね。
吉岡:でも実際には、性行為をする人全員に関係する話なんです。それを強く主張しすぎると逆効果になることもあるので、伝えるのが難しい問題です。