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『ぷよぷよ』『はぁって言うゲーム』の生みの親が語る“人生が変わるゲームのつくりかた”「ゲームの面白さはルールで決まる」

新しい発想を生み出す「自分マトリクス」とは?

――本書では自分が興味あることについて制限時間を決めて、ひたすらキーワードを書き出す「自分マトリクス」というワークを紹介されています。いわゆる、ブレインストーミングに近いですが、米光さん自身はこのメソッドをいつくらいから考案されて、ゲームづくりに取り入れられたのでしょうか? 米光:自然と生まれてきた方法なんですよね。「ぷよぷよ」をつくったときには、すでに使っていました。当時、「テトリス」が大ヒットしていたため、会社から「落ちゲーを作れ」と言われたんですが、「テトリス」の二番煎じになるのは嫌だったんです。そこで、最初に「テトリス」の特徴や魅力をキーワードとして書き出してみました。 ――「きっちりとハマったときが気持ちいい」ということや「BGMの『コロベイニキ』がかっこいい」などでしょうか? 米光:僕にとって「テトリス」はその「ソリッドさ」が大きな魅力でした。固いブロックが落ちてきて一直線に消えるという、非常に数学的で論理的なデザインですね。一方で、当時の多くのゲームは、かわいいキャラクターや柔らかい雰囲気が中心でした。そこで、「『テトリス』のソリッドさを禁じ手にして、柔らかくて親しみやすい雰囲気をテーマにしたらどうだろう」と考えたんです。そうして生まれたのが「ぷよぷよ」でした。 ――「自分マトリクス」で『テトリス』のソリッドさを削ぎ落として、ぷよの柔らかさに着目したことで、大ヒットに結びついたのですね。 米光:このときは、まだ方法論としてまとめてはいなかったのですが、キーワードを自由に書き出していくことで、新しい発想が得られるということに気が付きました。それが徐々に、自分の中でメソッド化されていって、今の「自分マトリクス」ができあがったのです。

アイデアを出す秘訣はない「ただ考えるだけ」

人生が変わるゲームのつくりかた

著書『人生が変わるゲームのつくりかた』を手にする米光さん

――アイデアは一瞬のひらめきではなく、何度も考え込むことでようやくかたちになるのですね。 米光:よく「アイデアを出す秘訣はなんですか?」と聞かれますが、正直「秘訣はなくて、ただ『考える』だけです」と答えたくなります。結局、「考える」ということを続けるほかありません。多くの人は、アイデアがひとつ浮かぶと、そこで満足して考えることを辞めてしまいます。しかし、考え続けることで、さらに良いアイデアが出てくることもあるんです。 ――考える続けることが、ゲームづくりの秘訣なのですね。 米光:ただ、「ずっと考えろ」と言っても、実際に考え続けられる人は少ないんですよね。だからこそ、紙にキーワードや要素をひたすら書き出す作業が重要になります。無駄だと思えるくらい書き出してみる……。そのプロセスを経ることで、普段ぼんやり考えているときでも、なにかしら考えられる状態を作り出せるんです。つまり、「考える」という行為を具体的な手順に落とし込んでやりやすくしたのが、「自分マトリックス」なのです。
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考案したメソッドのせいで教え子が仕事を辞めた!?
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編集者/ライター。1993年、福岡県生まれ。出版社に勤務する傍ら、「ARBAN」や「ギター・マガジン」(リットーミュージック)などで執筆活動中。著書に『奨学金、借りたら人生こうなった』(扶桑社新書)がある
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