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朝のバスにいる迷惑な“おしゃべり老人”。誰も注意できずにいたが…意外な人物が「解決」するまで――人気記事ベスト

突然響き渡った女子高生の声

「おじいちゃん!私、席を変わりますからこちらへどうぞ」。しばらくして、前方の座席に座る女子高生が、いきなり老人のほうを向いて声を上げ、周囲にいた通勤客は一斉に彼女に視線を向けました。 「思わず手を止めて声のする方へ目をやりました。たぶん、彼女も毎日このバスに乗車していたはずです。彼女は私より前にある始発の停留所から乗ってきているはずです。だから、いつも前方の席に座っているのは知っていました」  彼女の甲高い声に老人も驚いた様子で、キョトンとした表情で前方の席へ歩み寄りました。相変わらずバスの車内は静まり返り、乗客の視線は前方の席に注がれていました。 「おじいちゃん、ごめんなさい。私、いつもヘッドホンをしていて何も気づかなくて。通勤で乗車している人たちは、みんな朝のこの貴重な時間でお仕事したり、寝不足を解消したりしているのだと思います。だから、おじいちゃん、これからは乗車したら真っ先に私のところへ来てください」

静けさを取り戻した通勤バス

バス

※画像はイメージ

 女子高生の勇気ある行動に自分の情けなさを感じた大村さんは、老人に席を譲り、中程の吊り革に捕まって立っている女子高生に歩み寄って謝ったそうです。 「いやあ、全く恥ずかしい限りです。降りる少し前に彼女のそばまで行って『自分が席を譲るべきでした。大人気ない自分の行為を反省しています。すみませんでした』と、少し硬めな口調で彼女に伝えると、『いえ、私はただの学生ですし、日々お仕事でお疲れの皆さんは、通勤バスでのつかの間の休息は必要だと思います』と返され、ますます立場がなくなりましたよ」  その会話は、他の乗客たちにも聞こえていたようで、皆一様にうなずいているようでした。それ以来、老人が乗車してきた後は、皆競うように席を譲るようになったといいます。もちろん、老人の大きな声でのおしゃべりも耳にすることはなくなりました。 <TEXT/八木正規>
愛犬と暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営
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