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競馬界出身の28歳女性が「20トントレーラー運転手」に転身したワケ「街中を走っているとビックリした顔で見られます」

馬乗り修行に終止符を打つことに…

オーストラリア時代のタマミさん

オーストラリア時代のタマミさん

 日本とは全く別世界の競馬に魅せられたタマミさん。現地では多くの人や日本では考えられないカルチャーとの出会いも果たす。 「オーストラリアは多国籍文化のため、競馬場で働く人たちも非常に国際色豊かです。言語や考え方、ライフスタイルも本当に様々で、早朝は競馬場で競走馬に乗っている女性が実は子育て中のお母さんだったり、医学部の学生だったり、まさに老若男女が入り乱れていました。そんな環境でスタッフが現場を仕切り、馬の管理を含め現場スタッフをまとめて引っ張っていたのは私よりも若い女性。男女関係なく活躍できる環境は新鮮でした」
バララット競馬場

バララット競馬場時代の一枚。オーストラリアではレース後の馬の筋肉をほぐす意味で「湖調教」や「海調教」が名物とのこと

 そしてタマミさんが後ろ髪を引かれる思いでオーストラリアを離れたのは2023年の夏。実は前年の夏に調教中の落馬事故で腰椎を骨折してしまい、数か月間の療養を余儀なくされていた。 「3ヶ月ほどで馬に乗れる状態まで回復しましたが、周りにも大ケガをしたライダーや残念ながら亡くなってしまったライダーがいました。私自身もいつか馬に乗れなくなる可能性があるなら、大きなケガをする前にここで馬乗りの修業にいったん終止符を打とうかなと。まだ体力も気力もある20代のうちに、他のことも挑戦しておきたいと考えるようになりました

「20トントレーラー」を運転することになったワケ

 そして日本に帰国後、タマミさんが行き着いたのは、思わぬ乗り物だった。 「なんとなく大型の乗り物に乗りたい気持ちがあり、帰国後に『大型一種免許』や『けん引免許』などを取得しました。その後、運送業者の募集を見つけて応募したことがきっかけで、今は大阪で20トントレーラーに乗っています」
タマミさん

20トントレーラーを乗りこなすタマミさん

 馬と離れ、運送業者に飛び込んだタマミさん。通常は普通のトラックから乗り始めるようだが、タマミさんは入社していきなり20トントレーラーに乗ることになったようだ。 「話を聞く限りでは、大半のドライバーさんは小さいトラックからスタートして、中型トラック、大型トラックと順序を経てトレーラーに行き着くのですが、私はそれを全部すっ飛ばして未経験から全長16メートルもある20トントレーラーを運転することになりました。私、大型や中型の運転の癖がなかったのが逆によかったみたいです。上司がそれを見抜いて大型に乗るきっかけをくれたので、とても感謝しています。前例もほぼないようで、実際、拠点先で他のドライバーさんたちからはドン引きされますし、大阪の街中を走っていても人からよくビックリした顔で見られますね(笑)」
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馬と車、乗るときに共通している“意外なこと”
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競馬歴30年以上の競馬ライター。競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。競馬情報サイト「GJ」にて、過去に400本ほどの記事を執筆。

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