更新日:2025年03月14日 10:52
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「値上げしない」サイゼリヤが“驚異的な集客力”で営業利益20倍。「非日常型に変化した」ガストとの差別化が大きく進む

 

ガストを象徴する「フレンチのフルコース」

 ファミリーレストラン最大手のガストと、サイゼリヤの戦略は真っ二つに分かれています。ガストは2024年11月に「至福のフレンチコース」を販売しました。白金台のレストラン「ジョンティ・アッシュ」の料理長で、ミシュランガイド一つ星を5年連続獲得した進藤佳明シェフが監修したもの。価格は税込で1990円でした。  このメニューはインフレ下で値上げを重ねたガストを象徴するもの。普段使いから非日常型レストランへと変化しているように見えるからです。  ただし、ここにきて過度な値上げによる客離れを警戒しているのも事実。2025年2月から「ガストフィットメニュー」を平日限定でスタートしました。これは30品の中から3品選び、ドリンクバーと日替わりスープがついて1000円前後というもの。コストパフォーマンスを重視した商品です。  いくらインフレとはいえ、飲食店や小売店が単価を上げるというのは簡単ではありません。高級路線を維持して高収益体質を維持していたセブン-イレブン・ジャパンは、2024年に入って既存店の客数が前年を下回るようになってきました。9月に「うれしい値!宣言」という低価格路線を打ち出し、客数の回復に尽力します。実際、10月からは前年を上回るようになりました。

サイゼリヤとガストは競合しない?

 すかいらーくは、足元で客数の減少に悩まされている様子はありません。しかし、高コストパフォーマンスの商品を打ち出したことからも、それに警戒している様子が伺えます。  日本フードサービス協会によると、ファミリーレストランの客単価は1058円で、ファーストフードは652円。これは2008年のデータのため、今は15%程度高くなっていると仮定すると、ファミリーレストランはおよそ1200円、ファーストフードが800円となります。  サイゼリヤの今の客単価は850円ほどで、価格帯はファミリーレストランよりもファーストフードに近づいてきました。消費者の気持ちになり、価格軸で食べる場所を考えた場合、マクドナルドのようなファーストフード店、大衆中華チェーン店などと並んでサイゼリヤが選択肢に入るわけです。ここでガストが選択肢に入るとは考えられず、2つのレストランのポジショニングは大きく変わったと言えるでしょう。
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悪いインフレを生き残る経営戦略は?
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フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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