元日本代表が教える「ザックが23人を選んだ理由」
盛り上がるW杯ブラジル大会。普段はサッカーにそこまで興味ないけど、この一大イベントに乗り遅れたくない諸兄必見。元日本代表、ジャーナリスト、サッカー中継のプロから、ブロガー、マニアが簡単に覚えられるフレーズやトリビアをこっそりご紹介。これを使えば、“にわか”も3分でサッカー通になれる!
◆生命線は本田、香川にあらず!日本代表はサイドバックに注目を
本田圭佑や香川真司など攻撃陣にタレントが揃う今回の代表だが、「日本代表の生命線はサイドバックにあります」と話すのは、元日本代表の波戸康広氏。自身もサイドバックとして活躍した波戸氏に、“プロの観戦術”を聞いた。
「W杯では、どのチームも中央エリアの守備を固めてきます。だから、まずはサイドの攻撃で主導権を握り、そこから中央を使いたい。サイドのスペースを一度使うことで、中央の本田のマークが空き、香川が中へと入って得点に絡むことも容易になるでしょう」
日本の右サイドバックは内田篤人、左は長友佑都の先発が濃厚。なおこの2人はタイプが異なり、「『長友はボールを足元で受けてから一対一を仕掛けるタイプ』で、『内田はタイミングよくスペースを見つけて上がり、スピードを生かして相手を振り切るタイプ』。この違いは、日本の攻撃が長友のいる左サイドで形を作り、そこから右サイドへと展開するパターンが多いこととも関係があります。だから左サイドにボールがあるときこそ、右の内田の動きに注目してほしい。また、長友が突破を仕掛けたときは、右アタッカーの岡崎慎司の中央へと走りこむ動きも見どころ。そうやってボールを持たない選手の動きを見ると、サッカーがより面白く見えますよ」
そのほかのサッカーを見る目を磨く方法を聞くと、「自分も監督の視点で考えるのが近道」だそう。
「監督になったつもりでスタメンを考え、それとザック(ザッケローニ監督)が選んだ11人を比べてみましょう。すると、『自分はこういう意図でこの11人を選んだけど、ザックはきっとこんな狙いでこのスタメンにしたんだろうな』と、自分の意図との違いから、ザックジャパンの狙いが見えてくるはずです」
なおザッケローニ監督が選んだ23人のメンバーを見るだけでも、どんなサッカーを志向しているかはある程度わかるとのこと。
「僕であれば、長身選手への対策も考え、闘莉王(名古屋グランパス)のような上背のあるCBを入れますが、ザックは上背のない今野泰幸を残した。それは彼のボールを動かす能力を買ってのことで、ほかのCB候補の吉田麻也、森重真人、伊野波雅彦も足元がうまい選手です。この選考から、ザックが守備より攻撃を重視し、DFからパスを回してイニシアチブを取るサッカーを志向しているとわかります。細貝萌ではなく青山敏弘を選んだ理由も同様でしょう」
そしてザックは「調子の良さ」よりも「使い慣れた選手への信頼」を優先して選手選考したとも。
「今野や伊野波は今季調子を落としていますが、ザックは彼らを外さなかった。調子の上がらない本田を使い続けるのも同じ理由だと思います」。
なお’02年W杯で監督を務めたトルシエは、逆に実績よりも調子のいい選手を積極的に選んだそうで、「僕が選考外になったのはW杯直前に調子を落としたことが大きかった」と波戸氏は当時を振り返る。さらに「あの頃の僕はほぼ右サイドバック専任の選手で、複数のポジションをこなせなかった。逆に今回選ばれた伊野波や今野は、複数のポジションをこなせるのが武器で、監督がチーム構成を考えるときに『こいつは使い勝手がいいから、手元に置いておきたい』と思われる選手ですね」。
なお大久保嘉人の選出は波戸氏にとってもサプライズだったというが、その見方はちょっと他とは違っている。
「それは大久保は本田に意見できる選手だからです。今回の代表は『本田ジャパン』と言っていいほど本田が中心のチームで、キャプテンの長谷部誠や最年長の遠藤保仁なども、本田に意見をするタイプではないですからね。本田の調子が上がらない今、大久保には得点以外の面でも期待は大きいです」
日本の試合は、ぜひ監督気分でスタメンを考えてから観戦を!
★サッカー通になれるフレーズ・代表選考について
『複数のポジションができないと今のサッカーではダメだよね』
★サッカー通になれるフレーズ・大久保選手について
『本田に“モノを言う”大久保が選ばれたのはサプライズだよなぁ』
【波戸康広氏】
’76年、兵庫県生まれ。元日本代表。横浜F・マリノス アンバサダー。現役時代は横浜・Fマリノス、大宮アルディージャなどで主に右サイドバックでプレーし、トルシエ監督時代には日本代表にも選出
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