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「日本人は、食べ物のことで四の五の言うのがみんな大好き」孤独のグルメ原作者・久住昌之氏

白飯、カレー、ラーメン、寿司、焼き肉……日常の食事で人は他人の食べ方のどこが、何が「許せない」のか? 時に根本的な人間評価に発展してしまうほど、譲れない大問題であったりもする「食べ方」問題を探ってみた ◆食いもんなんて所詮“ウンコの素”つべこべ言わずに食えばよし! 和食 時には根本的な人間評価にまで発展しかねない、千差万別な食のこだわり。なぜ、人は食べ物にこうも熱くなってしまうのか? 人気漫画『孤独のグルメ』原作者の久住昌之氏に聞いた。 「世界中でも日本人は特に食欲が細かい民族。家ではソースかしょうゆかでケンカして、ラーメン屋では脂やスープの濃さから麺の硬さまで何段階も注文をつけ、ノンアルコールビールは0.001%の違いにどっちがどうだと熱くなる。そうやって食べ物のことをしのごの言うのが、みんな“大好き”なんです(笑)」  そういう久住氏自身は意外にも「食べ物にこだわるのは恥ずかしいこと」と思っているんだとか。 「僕は最初から、食べ方や味付けにうるさかったり食べる順番を考えたりするヤツは滑稽だってことを作品に書いてる。食欲を性欲に置き換えてみたらわかりやすい。おっぱいはこう触らなきゃとか、こんなおっぱいがホンモノだって主張するようなものでしょ(笑)。食べたいもヤリたいも同じ生理的欲望で、下ネタに対して“上ネタ”ってだけ。“ウンコの素”に、マナーも本当の食べ方もないよ」  と苦笑するが、日本人の食への飽くなき探究心には、驚かされることもしきりだ。 「’80年代にエジプトから入ってきたモロヘイヤ。これは日本ですぐに普及して、蕎麦に天ぷらにパンやクッキーまで作られた。ところがエジプト人は何千年もスープとしてしか食べてなくて、日本人がクッキーをあげたらとてもおいしいと喜ばれたそう。極東の島国で資源が少ないから大事に使い回そうという気持ちも強かっただろうけど、本当に日本人は芸が細かくて工夫が大好きだよね」  その上、新しいもの好きでブームにも乗りやすく、好みもコロコロ変わっていく。 「新しいラーメンというとすぐ飛びつくし、これだけテレビで毎日グルメ番組をやってる国も珍しい。調理家電も毎年ちょっとずつ進化した新製品が出る。バカみたいだけど、見方を変えれば“おいしい”のためにこんだけ情熱を注げるなんて、平和だよね。食べ物のケンカなんて結局は大したことないし、家族や友達の食習慣をつべこべ言い合って喜んでるくらいが平和でいいんじゃない?(笑)」 【久住昌之氏】 1958年、東京都生まれ。漫画家。代表作に『孤独のグルメ』(扶桑社刊)、『花のズボラ飯』(秋田書店)など。ドラマ版『孤独のグルメ』(テレビ東京)が放送中 取材・文/古澤誠一郎 田山奈津子 取材協力/山脇麻生 青柳美帆子 井上こん イラスト/佐藤ワカナ ― [許せない食べ方]大研究【10】 ―
『孤独のグルメ』巡礼ガイド

原作版・五郎のイラストが目印

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