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なぜロンドン・パラリンピックのチケットは史上初めて完売したのか? 乙武氏が世界中を放浪して気づいたこと

 5月20日、『週刊SPA!』の創刊30周年記念イベント=SPA!フェスに、’13~’14年にかけて本誌連載『八面六臂』で、女装姿などをさまざまな一面を披露してきた乙武洋匡氏が登場。2年前の“大騒動”後、世界中を放浪して目にした海外のバリアフリー事情などについてマシンガントークを繰り出した!

ロンドンのバリアフリー事情から話し始めた乙武氏

ロンドンのバリアフリー事情から話し始めた乙武氏

 そのトークショーはのっけからブラックジョーク満載……。「手足がないのに『八面六臂』ってふざけた連載でしたよね」と言いながら、不倫騒動についても言及。「あれだけフルスイングで叩かれた障碍者っていうのは、ギネス記録ものかもしれませんね(苦笑)」と振り返りつつ、当時の生活ぶりを明かした。

「ずっと家に籠っていたんですよ。家の前には週刊誌記者がずっと張ってるから。外に出れば、美容院にもラーメン屋にもついてくる。正直、しんどいなと思って、思い切って昨年3月から海外に飛び出そうと考えたんです」

 それから1年で、訪れた先は37の国と地域。最初の訪問先はロンドンだった。ロンドンを選んだ理由は、実に乙武氏らしい。「’12年のロンドン・パラリンピックで、パラリンピック史上初めてチケットを完売させた」都市だったのだ。

「何が成功の秘訣だったのか、知りたくて当時の大会の総合ディレクターを務めたクリス・ホームズさんという、全盲のスイミングのメダリストを訪ねたんです。今では彼は上院議員。招待されたのは、英国の議事堂があるウェストミンスター宮殿でした」

クリス・ホームズ上院議員とはウェストミンスター宮殿で邂逅

クリス・ホームズ上院議員とはウェストミンスター宮殿で面会

 クリス・ホームズ氏は2つの成功ポイントを明かしてくれたという。パラリンピックは“感動の物語”として扱われがちだったが、健全なパラリンピックの発展を考えて、競技としての素晴らしさをアピール。そのうえで、ロンドン・パラリンピックの前年に、パラリンピックのプレ大会を開催したのだ。「本大会が一般客にとって、“未知との遭遇”になるのを避けるため」だった。一度、プレ大会でその面白さをロンドン市民たちが知ったことが、ロンドン・パラリンピックの成功に繋がったというのだ。

 本大会にむけて、ロンドン市内のバリアフリー対策も急速に進展。ロンドン市内の地下鉄にはエレベーターさえ設置されていなかったが、’12年パラリンピックまでに4~5割の普及率に達した。地下鉄のホームも車イス利用者を想定して、一部ホームのかさ上げを行い、電車との高低差をなくしていったのだ。

 ただし、在来線に関しては日本と同様、駅員が車イス用のスロープをその都度、設置するかたち。日本では乗車した駅から、降車する駅に車イス利用者の情報が伝わり、待ち構えている駅員によってスムーズな降車が可能だが、「イギリスの場合は3回に1回は、情報が伝わっていないのか、駅員がいなかった(笑)」とか。それでも、乙武氏がさほど不自由なく生活できたのは、周囲の乗客が率先して、降車や階段の上り下りまで手伝ってくれたから。

「僕の車イスは特別性で100kgもある。僕の体重を含めたら140kgあるのに、4人の男性が協力して運んだりしてくれたんです」

 乙武氏が「ぜひ日本もマネしてほしい」と話したのは、ロンドン市内のバス。運転席からボタン操作1つで、車イス用のスロープが飛び出る仕組みだという。「日本だと、運転手がスロープを設置して乗り降りさせてくれるけど、時間がかかるので利用者からすると他の乗客に対して少々肩身の狭い思いをすることが少なくない」のだ。

運転席のボタン1つで車イス用のスロープが登場するロンドンのバス

運転席のボタン1つで車イス用のスロープが登場するロンドンのバス

 日本と異なるのは、「時に不自由さを全員で共有する文化」が根付いている点だ。ロンドンでは朝の通勤ラッシュ時でも、満員電車は発生しにくい。ロープを貼って乗車制限をかけるためだ。当然、待たされれば通勤時間は長くなってしまうが、これはみんな一緒。車イス利用者も列に並んで乗車する。満員にならない分、肩身の狭い思いをすることもないというのだ。

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公共交通手段以外でも…

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