メシを食わない『孤独のグルメ』!? 異色のマンガ『散歩もの』が復刻連載
『孤独のグルメ』を世に送り出した原作・久住昌之、作画・谷口ジロ―の黄金コンビが描くコミック、『散歩もの』の連載が『週刊SPA!』9/16・23合併号(9/9発売)よりスタートした。
平凡なサラリーマン・上野原譲二が仕事の出先で、プライベートで散歩する様子を淡々と描いたエッセイ風コミックは、“おっさんがメシを食うだけ“の『孤独のグルメ』を超える“おっさんが散歩するだけ”というこれ以上にないニッチな設定。あてもなく歩くという部分は通じるところがあるが、『散歩もの』には『孤独のグルメ』にあったメシにありつくという唯一の目的すらない。
原作を書くにあたり久住氏は自らも舞台となる土地を歩いている。その際、三つの決め事を自分に課したという。
(1)調べない
「観光ガイド」や「町歩きマニュアル」など、本やインターネットを調べて出かけない
(2)道草を食う
事前に地図を見ても、歩き始めたら、その時その時の面白そうな方へ、積極的に横道にそれる
(3)ダンドらない
時間を限らず、その日で決めようと考えずのんびり歩く
「そうして歩くことによって、実際に予期せぬことが起こるのを、毎回のマンガの核にしたいと考えた」久住氏は「地図や路線図をながめて、行ったことのない町、降りたことのない駅、昔友達が住んでいた住宅街などで、なにかピンときたら下調べナシで行く」という。
そんな久住氏の姿勢が物語にリアリティを生み、取るに足らない出来事の一つ一つに深みを与える結果となっている。
散歩の最中、上野原が口にするセリフは決して特別なものではない。だが、それゆえに個々の読者の体験や記憶とシンクロして、淡々と進む物語に気付けば読者は引き込まれている。
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実はこの『散歩もの』は復刻連載で、初出は今からさかのぼること10年以上前に『通販生活』(カタログハウス刊)で連載されたもの。その後、単行本、文庫本になってはいるものの、一部ファンの間でのみ知られた存在であった。
20年以上に渡りじわじわと売れ続けた『孤独のグルメ』はテレビドラマ化をきっかけにファン層が大きく広がった。平凡な個人貿易商の日常を「食」というテーマを通して劇的に深化させたコミック『孤独のグルメ』で久住作品の奥深さ、谷口氏の精緻極まりない作画にハマった人は要チェックだ。(『散歩もの』は週刊SPA!誌上で8話連続で連載予定)
<取材・文/『孤独のグルメ』取材班>
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