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女は「身体を売ったらサヨウナラ」なのか?――鈴木涼美×峰なゆかによるAV女優論

「日経新聞記者はAV女優だった!70本以上出演で父は有名哲学者」。『週刊文春』にこのような記事が掲載されたのが14年10月のこと。スッパ抜かれた(?)のは「『AV女優』の社会学」(青土社)で注目を集めた社会学者・鈴木涼美さん。11月末には「身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論」(幻冬舎)を上梓したばかりだ。  新刊の発売を記念して、報道直後に週刊SPA!で3回に亘って掲載された漫画家・峰なゆか(『アラサーちゃん 無修正』『セクシー女優ちゃん ギリギリモザイク』)との対談を完全版で公開! 女は本当に「身体を売ったらサヨウナラ」なのか? 性を商品化することの中毒性について徹底したフィールドワークを基に考察し高い評価を得た鈴木涼美。アラサー女性の恋愛とSEXの本音を描いた漫画で共感を呼ぶ峰なゆか。AV女優というキャリアを経て執筆業で活躍する二人が「性を商品化すること」の意味を改めて考える。 ◆鈴木涼美×峰なゆかによるAV女優論
女は「身体を売ったらサヨウナラ」なのか?――鈴木涼美×峰なゆかによるAV女優論

「私たちがいたころって、AV女優の顔面レベルが高くなる前夜だった」(峰)

峰:鈴木さんの週刊誌報道を見たとき、「あ、あの本(「『AV女優』の社会学」)を書いた人か!」と。でもそれ以外は特に何も思わなくて。むしろ「2014年の今、これがスキャンダルになるんだ!」っていう驚きが大きかったです。 鈴木:そもそも知り合いには普通に言っていたので、まわりは「今までバレてなかったんだ。すごいね」みたいな反応でしたね。仲のいい友達とは「ひと昔前の週刊誌の見出しみたいな経歴だねあんた」って笑ってたんだけど、ひと昔前じゃなかった! 見出しになっちゃった!って。 峰:そうそう、「これはスキャンダルだ!」っていう感覚がゼロ年代の香りがする! 鈴木:鈴木涼美というペンネームで執筆する際は、日経の記者というプロフィールは意識的に伏せていたので、私としては鈴木涼美=元日経記者っていうのがバレちゃった感じですね。AVの話は、プロフィールには明記してないですけど、トークイベントで話したこともありますし、別に問題なかったんです。ただ、週刊誌の取材ではAV女優だったことが会社にバレてクビになったという聞き方をされたので、それは違いますよって。 峰:でも、本を出すときに「元AV女優が書いた」って明記したほうが絶対に売れたのに、そこはどうして伏せたんですか? 鈴木:もともと修士論文として書いたものだったので、誰が書いたかっていう情報は論文には必要ないかなって。自分にいろんな顔があったほうが楽しいなっていうふざけた理由もありました。あとは、私の戦略としては学問の世界にいるオジサンたちに読ませたかったんです。だったら、「元AV」っていうのは伏せて、カタめな装丁にしたほうが読んでくれるかなと。 峰:これは『セクシー女優ちゃん』にも書いたんですけど、私もわざわざ「元AVです」って言わないようにしていたときもあったんです。そしたら「隠してる」と思われて、「黙っててほしいなら一発ヤラせろ」みたいな男が沸いてきて。それがすごいめんどくさい! 聞かれないから言わないだけなのに、「意図的に隠してる」って思われるんですよね。 鈴木:書く仕事をするうえで、峰さんのようにプロフィールとしてはっきり出すか、絶対に隠し通すかっていう二択しかないのは不自由だなって感じますね。聞かれたら答えますけど、会社の面接で「元AV女優ですか?」なんて聞かれなかったから、言わずに入社しただけで(笑)。 峰:「隠す」のにも「隠さない」のにも大きな理由なんてないんですよ。ただただめんどくさいという感情でしか処理してない。明言したらしたで「AVやめてからあふれる性欲はどうしてるの?」とか聞かれると、この人IQいくつなのかな?って思います。 ⇒【vol.2】に続く https://nikkan-spa.jp/760444 【鈴木涼美(すずき・すずみ)】 83年、東京都生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。09年、東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。専攻は社会学。「身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論」(幻冬舎)発売中。現在は日経新聞を退社し、執筆業を中心に活動 【峰なゆか(みね・なゆか)】 漫画家。アラサー世代の女性の恋愛観、SEX観を冷静に分析した作風が共感を呼び各誌で活躍中。「アラサーちゃん 無修正」(1~3巻、以下続刊)は累計40万部を超す人気作となり、14年7月には壇蜜主演でテレビドラマ化された <取材・文/おぐらりゅうじ 撮影/尾藤能暢>
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