【3・11特集】脱原発へ[純国産エネルギー]に秘められた可能性
―[3・11特集]―
福島第一原子力発電所の事故をうけ、日本はエネルギー政策の抜本的な見直しが求められている。「脱・原発」を叫ぶ世論が強まる一方で、日本は資源が貧しいため、現在稼働している原発を停止すれば、エネルギー自給率は4%となってしまうという問題を抱えている。そこで、3・11以降、注目を集めているのが資源を外国に頼らない「国産エネルギー」の開発である。太陽光・地熱・風力・水力などの自然エネルギーを最大限に活用すれば、持続可能で安全なエネルギー供給は実現するのだろうか? 田中康夫氏、広瀬隆氏、東大教授らが提言する新エネルギー政策とは?
◆「新エネルギー産業振興で地域密着型雇用の創出を!」
「新党日本」代表の田中康夫氏は、日本を再生するための9つのビジョンを提言した。そのうちの一つがエネルギー産業振興だった。原発の縮小が避けられない地震大国の日本は地熱、風力、用水路などのマイクロ水力発電に加え、太陽電池=太陽光発電を“国策”とし、地域密着型の雇用を目指せというものだ。
「かつて世界一の開発技術力と市場占有率を誇っていた太陽電池を、何故か日本政府は支援せず、現在は中国やドイツの後塵を拝しています。ならば逆転の発想で、新築・既存のビルも家屋も全国で太陽光パネル設置を建築基準法で義務付け、被災地でのシャープや三洋電機の事業所展開を全面支援し、地元雇用を創出するのです。首相と経団連、連合の両会長が共同会見して具体的な採用人数も発表したなら、勇気と希望を与えます。同時に既存の原発は15年~20年で廃炉とし、代替エネルギーの供給計画を国民に示しましょう。莫大な国費を要する廃炉も、反面教師としてのビジネス需要です」(同)
しかし、政府の対応は遅かった。野田佳彦首相は「被災地の復旧復興を進めることが最大の使命」と語っていたが、瓦礫の撤去は遅々として進まず、復興策を盛り込んだ2011年度第3次補正予算案が成立したのも11月21日であった。その後、12月22日には「気仙広域環境未来都市」として、岩手県の3市町が国の「環境未来都市」に選定された。選定に伴い、各省庁による集中的な関連事業の導入や各種規制緩和、優遇措置による再生可能エネルギー分野を中心とした民間投資の促進が期待されている。少しずつではあるが、政府主導の復興が進んでいる。
※特集「復興のための田中康夫ビジョン」より
⇒ https://nikkan-spa.jp/3189
◆実は日本は「資源大国」だった!?
CO2を排出せず、環境負荷が少なく、ウランや石油のように資源を外国に頼らない「国産エネルギー」の開発が各分野で進んでいる。東京大学の石原孟教授は、2007年に関東地方沿岸域での洋上風力の賦存量(理論的に導き出された資源の量)に関する論文を発表、業界関係者を驚かせた。「関東沿岸から50kmの全海域を対象とした場合の総資源量は年間287テラワット(2870億キロワット)/時で、2005年の東京電力の年間販売量とほぼ同じ。太平洋沿岸は風況が良く、大規模洋上風力発電施設は大きな可能性を秘めています」と石原教授は解説する。ほかにも、島国である利点を活かした「波力発電」、資源量世界3位・技術力1位の「地熱発電」、用水路や砂防ダムを利用した「小水力発電」、さらには「音力・振動力発電」といったユニークな発電技術など、日本には少ない資源を最大限に活用する高い技術力がある。
※特集「意外とスゴイ![純国産エネルギー]の実力」より
⇒ https://nikkan-spa.jp/3196
◆火力発電の3割をGTCC発電に切り替えれば原発なんて必要ない
現在日本に存在するエネルギーをかき集めたら、いったいどのくらいあるのだろうか? 原発に頼らずに電力を確保するためには、効率のよい発電方法と自給可能なエネルギー源が求められる。原発推進に警鐘を鳴らし続けてきたジャーナリストの広瀬隆氏はこう断言した。
「世界のエネルギーの趨勢は原子力からガスに移行するということが既に常識になりつつあります。天然ガスはCO2などの排出量が少ないクリーンなエネルギーです。それを燃料とする効率のよいガスタービン・コンバインドサイクル(GTCC)発電に火力の3割を切り替えれば原発なんて必要ないのです」
広瀬氏はGTCC発電が設置されている九州電力・新大分発電所を見学して感嘆したという。
「11万~24万キロワットの中型発電機13基で、総能力230万キロワットという巨大原発2基級の発電能力を持っている。熱効率は49%を達成し、必要な電力量に応じて調整ができる。起動後、最大出力になるまでに約1時間と機動性に優れ、原発よりも扱いやすい」
※特集「広瀬隆も太鼓判 [企業の自家発電能力]だけで原発60基分!!」より
⇒ https://nikkan-spa.jp/26924
今後さらに増えていくであろう、自然エネルギー発電や高い技術力による新たな発電方法に、これからも注目だ。これらに原発議論の着地点、さらには未来の日本のあり方のヒントが隠されているのではないだろうか。 <構成/日刊SPA!取材班>
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