死者の声だと思っていた物音 実は……
―[オカルト現象の科学]―
† 霊界通信 †
「こ●に●わ」と、音を飛ばして発音しても、聞きなれた「こんにちは」に聞こえてしまうように、聴覚にも錯覚は起こる。
「ラトビアのコンスタンティン・ラーデブ博士の実験で、電波を遮断した箱で録音したホワイトノイズに死者の声が録音され、聞こえると有名ですが、これは『電子音声現象』といわれる音です。」
その音を聞いた人は、個人の解釈や内在的なイメージと結び付けてしまうのだという。
しかし、誰が確認しても音声や映像が入りこむこともある。これを説明するのが電波の存在だ。
「周波数が低い電波帯域だと、普段は入らないはずの放送局の電波をキャッチしてしまうことがあります。これは、電離層の異常などによって放送用の電波が通常なら届かない場所まで届く『異常伝播』のためです」
この異常伝播の影響により、’78年には東北地方の1~3チャンネルに共産圏の放送が入ってしまったのだとか。
「これは『スポラディックE層』という電離層によって引き起こされた現象です。大気圏にはD層、E層などの電離層があり、電離層は、地球の大気に太陽から届く放射線がぶつかることによってできています。スポラディックE層とは、主に夏季の日本海周辺の上空100km付近に突発的に発生する電離層のことで、東北地方で起きた現象は、これにより共産圏の放送が反射されて日本にまで届いたものだったんです」
しかも、スポラディックE層のような突発的な電離層は、さまざまな事象によって形成されやすい。
「オーロラや流星によっても生じますし、飛行機に反射し、異常伝播することもある。流星による異常伝播は『流星散乱』といい、この異常伝播で海外の放送をとらえようとしているマニアもいます」
心霊現象は、人の心理と科学が重なれば作り出せる。ならばこの現象を巧みに利用し人の心をコントロールすることができると考えれば、ある意味、心霊現象より怖いかも……。
霊界通信の原因、スポラディックE層の仕組み。有線デジタル化が進めば、霊界通信現象は減少するかも!?
【久我羅内氏】
神奈川県生まれ。科学ライター。さまざまな不思議現象を研究し、テレビ番組の企画、リサーチや執筆活動を行う。著書は『不可思議現象の科学』(サイエンス・アイ新書)など
― オカルト現象の科学【6】 ―
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