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自傷行為すらもファッション感覚?現役女子大生ライターが追う「ぴえん系女子」の生態

15歳から新宿・歌舞伎町に通い続け、ティーンの生態を追う現役女子大生ライターの佐々木チワワ。彼女が路上で見かけたのは、自傷行為をファッション感覚でする若者たちだった―。いま、増えつつある“病みカルチャー”の真相に迫る!

JKの流行語「ぴえん」が病みカルチャーに変貌した理由

ぴえん

佐々木チワワ氏

 緊急事態宣言中でも活気にわく新宿・歌舞伎町を私が歩いていると、「ぴえん系女子」を数多く見かける。路上で人目を気にせず自撮りや配信を行うもの、酔いつぶれて路上で寝るもの、ホストにすがりついて泣くもの、中年男と明らかにパパ活を行うもの……、彼女たちは退廃的でありながら、生きる上での強さも感じさせる。私は思う、「ぴえんしてるね~」と――。  そもそも“ぴえん”とは何か? 発祥は諸説あるが、泣き声の「ぴえーん」を省略した悲しみを表現した擬態語が始まりだった。  ’18年末から使われはじめ、「バイトしんどい。ぴえん」と悲しいとき、「彼氏が優しかった。ぴえん」と嬉しいときなど、心情を表す汎用性の高い表現として広まり、「JC・JK流行語大賞2019(コトバ部門)」で1位を獲得して一般認知された。ぴえんは誕生から約3年たち、文字の役割を超えていく。 「死にたい。ぴえん……」「眠剤、大量に飲んじゃった。ぴえん……」など、メンタルヘルスに病を抱えるいわゆる“メンヘラ系女子”が自身のSNSで精神的に落ち込んでいるときの“病み投稿”の語尾にぴえんを多用。次第に自傷行為などを「ぴえんしちゃった……」と“行動様式”を表す言葉へと変容しはじめる。筆者の使い方もまさにそうだ。

病みファッションとして普及する“ぴえん”

 また、ぴえんはファッション用語としても浸透していく。近年、メンヘラ系女性に流行のファッションスタイルとして、「量産型・地雷系」がトレンドになりつつあるが、文字通り、量産型は没個性の似たようなスタイルで、地雷系は付き合っては危険そうなスタイルというもの。  基本的には精神的な“病み”を感じる泣き顔系メイクに、白・黒・ピンクを基調にした洋服に、ハイブランドのアイテムにあえてマイメロやシナモンのキャラクターアイテムを身に着けている。  ティーン向けのファッション誌『LARME』の’20年秋号では、9ページにわたる「量産&地雷in新宿歌舞伎町」特集。モデルたちが「歌舞伎町のランドセル」と呼ばれるMCMのリュックを背負っているのだが、その決めポーズがまさに“ぴえん”そのもの。ホストクラブの看板を見つめながら、ピンクのエナジードリンクにストローを挿して飲むカットなどを掲載していたのだ。  若者たちからは「ぴえんすぎるよ!」と話題に。これらのファションカルチャーを一括して“ぴえん系女子”と呼ぶことも増えてきている。
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歌舞伎町に救いを求める本物のぴえん系女子
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現役女子大生ライター。10代の頃から歌舞伎町に出入りし、フィールドワークと自身のアクションリサーチを基に大学で「歌舞伎町の社会学」を研究する。歌舞伎町の文化とZ世代にフォーカスした記事を多数執筆。ツイッターは@chiwawa_sasaki

「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認

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