2021年の“裏流行語”!?「トー横キッズ」とは一体なにか?
2021年流行語大賞は「リアル二刀流/ショータイム」ならば、アンダーグラウンドの世界の大賞があるならば、“トー横キッズ”ではなかろうか。歌舞伎町のビル横にたむろする、奇抜な服装・行動をする若者たちを指す言葉だ。路上で騒ぐ問題行動から、暴行事件、そして殺人事件まで発生。トー横キッズはどう生まれ、どう変化したのか。「歌舞伎町の社会学」をテーマに研究する現役女子大生ライターの佐々木チワワ氏が語る。
※本稿は、佐々木チワワ『「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認』(扶桑社新書)の一部を再編集したものです。
「トー横キッズの専門家として、彼らの生態を教えてください」
2021年下半期、SNSやメディアで大きく騒がれた「トー横キッズ」。彼らは歌舞伎町の新たなシンボルとなったゴジラが吼える「新宿TOHOビル」(旧コマ劇場)、その東側の路地でたむろする若者たちのことだ。歌舞伎町のセントラルロード中央に位置するTOHOシネマズ新宿が誕生したのは、2015年4月17日。旧コマ劇場跡地に建設され、ゴジラヘッドと呼ばれるゴジラと同じ高さに設置されたモニュメントから、「ゴジラ前」「TOHO前」などと呼ばれる歌舞伎町のシンボルとなった。
筆者が歌舞伎町に足を踏み入れたのは2015年末。彼らの存在を知り、交流を持ちはじめたのはその3年後からだ。最初に路上にたむろしはじめた初期メンバーと友達になり、時に彼らと飲むこともあった。そして今では彼らの経緯を知るライターとして、メディアで専門家的な扱いを受けている。では、トー横で生きる彼らは、一体どのようにして誕生したのか。
2010年頃から女子中高生たちがSNSでかわいく撮れた自撮り写真を「#自発ください」というハッシュタグとともに投稿することがブームになった。自発とは“自分から発信する”の略であり、褒め称えるリプライやいいね!などがたくさん欲しいということをライトに表現していた。そこから「#らぶりつ」(いいね!&リツイートをください)になり、現在は「#1㎜でもいいとおもったらRT」などをつけた投稿に変化。そうした自撮り写真を投稿する人たちを、「自撮り界隈」と呼ぶことがSNSに定着した。
そんな自撮り界隈の人間がオフラインで交流する際の待ち合わせ場所として指定されるのが、新宿TOHOビル前だったのだ。自撮り界隈には歌舞伎町で働くバーテンダーがいたことから、店が開くまでの0次会の場所になり、そこに歌舞伎町の住人であるスカウト、営業時間外の売れないホストも合流し、混沌とした路上飲みの場所になったのがそもそもであるとされる。自称「初代トー横界隈」のバーテンはこう語る。
「僕がトー横にいたのは2018~2019年だったんですけど、都内でオフ会する連中が待ち合わせに使っていたのがTOHO前。あのビルに隣接するバーには、自撮り界隈で有名な人物がキャストとして働いていたり、歌舞伎町と自撮り界隈の癒着というか、関係が深くなっていった感じでしたね。あと、初期メンバーには18歳未満の子が多くて、ホストクラブとかは年齢確認が厳しいから入れなかったのも大きい。結果、遊びに行くならホストより安いし、年齢確認も緩いバーになった。歌舞伎町のバーは24時以降にオープンする店がほとんどだったから、24時まで居酒屋だったり、路上で時間をつぶすというのが当時の流れでしたね」
お金もなく、路上に集まる彼・彼女たちのことを、ホストとその客である風俗嬢やキャバクラ嬢たちが「キッズ」と呼びはじめた。それがトー横キッズ、という名称のおこりだ。Twitterで「TOHOキッズ」という投稿で最も古いのは2019年の9月17日。令和になって誕生した言葉である。
自撮り界隈の待ち合わせ場所だった、トー横
ルーツは、自撮りを投稿する若者たちのSNSにおける「#(ハッシュタグ)」から
現役女子大生ライター。10代の頃から歌舞伎町に出入りし、フィールドワークと自身のアクションリサーチを基に大学で「歌舞伎町の社会学」を研究する。歌舞伎町の文化とZ世代にフォーカスした記事を多数執筆。ツイッターは@chiwawa_sasaki
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