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日本の運命は参院選で決まる。岸田首相に運命を託していいのか?/倉山満

岸田文雄首相に「黄金の3年間」が訪れようとしている

 日本の運命は参議院選挙で決まる。と認識していない人が多い。政治家ですら認識していない人だらけなのだから、頭が痛い。総理大臣は衆議院選挙で勝っているから、総理大臣をやれている。しかし、参議院選挙で勝たねば何もできない。それは平成政治では顕著で、参議院で多数を得ていない総理大臣は退陣に追いやられ続けた。
岸田文雄

21日、党首討論会で「日本を守り 未来を創る」とボードを掲げた岸田文雄首相は、翌日にも「日本を守り未来を創るため全力を尽くす」とSNSに投稿。岸田氏の見る“未来”とは―― 写真/産経新聞社

 日本の総理大臣は、与党である自民党の総裁がやることになっている。いまだに記憶に新しい菅義偉前総理の如く、選挙に勝てない総理大臣は容赦なく引きずり降ろされる。しかし、選挙に勝った総理大臣は自らが辞めると言わない限り、辞めさせる方法はない。安倍晋三元首相がそうだった。では、岸田文雄首相は?  岸田首相自身も心得ていたようで、総裁選に勝った段階から今回の参議院選挙を意識していた。ここで勝利すれば、次の参議院選挙まで3年間、衆議院も解散しなくていい「黄金の3年間」が訪れると言われている。

岸田首相に日本の運命を託して良いのか

 さて、岸田首相に日本の運命を託して良いかどうか、有権者には考えてほしい。  今回の選挙での争点は、ウクライナ危機による物価高と景気対策。実は一つの問題であり、つながっている。ただし、ガソリンの値段が上がって生活が苦しいので何とかしてほしい、などという単純な話ではない。政治を見る時は、国際政治・国内政局・重要政策の三位一体で捉えねばならない。  世界中の最大関心事はウクライナ問題だ。最近は米欧でも「ウクライナ疲れ」と言われるようだが、日本の隣国の核保有国が残虐な侵攻(いわゆる侵略戦争)を続けている事実は変わらない。一進一退だ。ウクライナが善戦し、時間を稼いでくれている間が最後の猶予期間だと思った方が良い。

「防衛費GDP費2%」を“5年以内”など寝言だ

 国力とは軍事力。軍事力とは防衛予算だ。岸田自民党が「防衛費GDP費2%」を提言したのは良し。ただし「5年以内」などと寝言も付け加えている。本欄でも指摘してきたが、間に合うのか?  この2%など、合格最低点だ。合格最低点とは、中国ロシア北朝鮮に対し、最低限の主張をできる軍事力を有する、必要条件だ。もちろん、金をつけるだけでなく正しく使って必要十分条件を満たすのだが、必要条件なしに十分条件も何もない。  自民党の提言では必要な軍事力を列挙しているが、それらを全部積み上げたら、軽く2%など超えてしまう。それを合格最高点の如く勘違いさせるから、岸田自民党の議論はおかしいのだ。しかも自民党としての合意すら得られず、「必要なものを積み上げるのが大事であって、総額ありきの議論をすべきではない」など、十分条件で必要条件を否定する議論が飛び出している。中学数学もできないのか?
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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