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岸田首相は遂に「増税派の傀儡」としての本性をむき出しに/倉山満

岸田首相は遂に「増税派の傀儡」としての本性をむき出しに

 もはや賭けが成立しない。
黒田東彦日銀総裁

黒田東彦日銀総裁は長期金利の上限引き上げについて12月20日の会見で「金融引き締めではない」と説明。金融緩和継続の方針を強調したが、このままではその方針が覆る日も近い 写真/時事通信社

 ’23年の何月から景気が悪くなるかの議論はあっても、良くなるかもしれない、との議論は成立し得なくなってしまった。それほど決定的な事件が起きていたことに、どれほどの日本人が気付いているだろうか。  ’22年2月のウクライナ事変をきっかけに、防衛費倍増の議論が待ったなしとなった(それでも5年後に、などとヌルい結論になったが)。  政府は参議院選挙後、これ一本にかかりきりになった感があるが、曲がりなりにも与党をまとめた。また、(安倍晋三元首相の側近だった)与党幹部の萩生田光一政調会長が「財源として来年からの増税はしない」と押し切った。  ところが、突如として岸田文雄首相は「防衛増税」を打ち出した。岸田首相は遂に「増税派の傀儡」としての本性をむき出しにした。

増税派が狙うは「日銀人事」

 これに対し、先週号で「高市の乱」を伝えた。閣内にいながら、高市早苗経済安保担当大臣が反旗を翻したのだ。既に趨勢(すうせい)は見えていたが、案の定、腰砕けとなった。SNSでは「どうせ、いつものガス抜きだろ」と冷ややかな視線が圧倒的多数だった。だが、そんな単純な話ではない。  自民党良識派も決起、反対論が燎原の火の如く広がり、「来年からの増税」は阻止した。結果、「再来年以降のどこかで増税」となった。要するに先送りであり、玉虫色の決着だ。むしろ良識派は「来年からの増税を阻止した」「その先の事は後でいくらでも潰せる」と怪気炎を上げるかもしれない。  ここで問題である。増税派は、最初から「再来年以降のどこかで増税」を考えており、織り込み済みの結論だったのだ。では、増税派は何を狙っているのか。  日銀人事である。

「史上最強の財務事務次官」が副総裁に急浮上

 黒田総裁と二人の副総裁の任期切れ後、どのような人事を望むのか。  総裁は、雨宮正佳現副総裁の昇格が有力視されてきたが、ここにきて中曽宏前副総裁が有力視されるようになってきた。雨宮氏と中曽氏のいずれも、日銀プロパー。  副総裁には、木下康司元財務事務次官が急浮上している。自民党総裁選・衆議院選挙・東京都議選挙・参議院選挙と連戦連勝、経済もアベノミクス絶好調だった、絶頂期の安倍首相に対し真っ向から喧嘩を売り、消費増税8%を押し付けた。いわば、「史上最強の財務事務次官」「増税大魔王」である。5年後には総裁に昇格する含みの副総裁である。  もう一人の副総裁は、金融緩和を中核とするアベノミクスを支持したリフレ派を追放できれば、なんでもいい。「初の女性副総裁」として複数の名前、たとえば翁百合日本総研理事長のような名前が挙がる。要するに「リフレ派以外の学者で、女であれば誰でもいい」のである。
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岸田政権が存続する限り、今の黒田路線を否定する人事が行われるだろう
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1973年、香川県生まれ。救国シンクタンク理事長兼所長。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中から’15年まで、国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務める。現在は、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰。著書に『13歳からの「くにまもり」』など多数。ベストセラー「嘘だらけシリーズ」の最新作『嘘だらけの日本古代史』(扶桑社新書)が発売中

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