お金

日本の国力が低下したから、円安が進んだって本当?元日銀副総裁がわかりやすく解説

私は経済学者として国内外の大学で教鞭をとったりした後、’13~’18年には日本銀行副総裁として金融政策の立案にも携わりました。そこで、感じたのは「経済を知れば、生活はもっと豊かになる」ということ。そのお手伝いができればと思い、『週刊SPA!』で経済のカラクリをわかりやすく発信していきたいと考えました。

日本の国力が低下したから、円安が進んだって本当?

経済オンチの治し方

イラスト/岡田 丈

 急激に円安が進んだ昨年、某ワイドショーでは有名コメンテーターがしきりに「日本の国力が低下している証拠です」と円安の原因を分析していました。過去には、新日本銀行法(中央銀行の独立性が明確になりました)が施行された1998年に日銀総裁になった速水優氏も、「円高は国力が強く、円安は国力が弱いことを示す」という信念の持ち主でした。  この「国力」は経済成長に代表される経済力のことのようですが、本当にそうでしょうか?  日本では1980年代後半に、株価と地価が考えられないほど高騰するというバブルが発生しましたが、1990年に株価が、その翌年に地価が暴落し、バブルは崩壊しました。実質成長率は1992年から急落してバブル景気が完全に終わり、その後、’12年まで「失われた20年」を経験することになります。  このバブル時代の平均ドル円レートは1ドル=183.20円で、実質成長率の年平均は4.3%でした。一方で「失われた20年」のドル円は107.40円で、実質成長率は0.77%です。 「失われた20年」のドル円はバブル時代と比較して70%以上も円高が進行して“国力が強く”なったにもかかわらず、実質成長率はバブル時代より80%も低下したのです。
次のページ
続きを読む
1
2
3
東京大学大学院経済研究科博士課程退学。上智大学名誉教授、オーストラリア国立大学客員研究員などを経て、’13年に日本銀行副総裁に就任。’18年3月まで務め、日本のデフレ脱却に取り組んだ経済学の第一人者。経済の入門書や『「日本型格差社会」からの脱却』(光文社)、『自由な社会をつくる経済学』(読書人)など著書多数

記事一覧へ
おすすめ記事
ハッシュタグ