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円安と円高のどっちが、日本にとっていいの?元日銀副総裁がわかりやすく解説

私は経済学者として国内外の大学で教鞭をとったりした後、’13~’18年には日本銀行副総裁として金融政策の立案にも携わりました。そこで、感じたのは「経済を知れば、生活はもっと豊かになる」ということ。そのお手伝いができればと思い、『週刊SPA!』で経済のカラクリをわかりやすく発信していきたいと考えました。

円安と円高のどっちが、日本にとっていいの?

経済オンチの治し方

イラスト/岡田 丈

 ’22年後半にかけて急激に円安が進み、これがエネルギーや輸入食品の円建て価格を押し上げ、日本のインフレの一因となりました。  このような円建て輸入価格の上昇は、一般に家計の実質所得を減らして消費を抑制します。しかし、インフレ率(消費者物価上昇率)は2.5%に留まっており、消費を大きく抑制するほどの上昇ではありません。  実際、’22年の家計消費は前年比1.2%増で、ここ10年で最大の増加率になっているのです。  そのため、現状では「円高よりも円安が望ましい」が答えになります。内需(消費と設備投資)が弱い日本では、円安で輸出が増えて輸入が減ることが、需要不足を解消するうえで重要になるためです。実質GDPと人々の所得を引き上げ、それを通じて消費を増やす要因となります。  日本の輸出が実質GDPに占める割合は、1994~’99年が9.2%、’00~’12年13.8%。’13~’22年18%と上昇傾向にあり、日本経済の需要を牽引するうえで、ますます重要になっています。逆に、円安に伴い輸入は減少しており、輸入品と競合している国内生産物に対する需要を高めています。
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東京大学大学院経済研究科博士課程退学。上智大学名誉教授、オーストラリア国立大学客員研究員などを経て、’13年に日本銀行副総裁に就任。’18年3月まで務め、日本のデフレ脱却に取り組んだ経済学の第一人者。経済の入門書や『「日本型格差社会」からの脱却』(光文社)、『自由な社会をつくる経済学』(読書人)など著書多数

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