こんなにおかしい! クリミアをめぐるロシアによる反ウクライナプロパガンダ

<文/グレンコ・アンドリー>

なぜロシアはデタラメな反ウクライナプロパガンダを流し続けるのか

 2014年に、ロシアはウクライナを侵略した。最初の侵略対象となったのはウクライナ南部のクリミア半島である。その後、ウクライナ東部の2州にもロシア軍が侵略した。侵略の際、ロシアは代替的な反ウクライナ、つまり侵略被害者であるウクライナを悪者にするプロパガンダをあらゆる手段を利用して流している。その反ウクライナプロパガンダの一つとは、ロシアによるウクライナ南部のクリミア半島の強奪を正当化するものである。  クリミア強奪を正当化する時、ロシアは基本的に三つのプロパガンダのパターンを利用している。それは、 ①歴史(クリミア半島は元々ロシア) ②人口構成と世論(クリミア半島の人口は6割はロシア人であり、住民の多数はロシアへの編入に賛成した) ③ウクライナへの編入の経緯(ウクライナ出身のフルシチョフはクリミアをプレゼントした) ということである。  筆者は2019年12月3日に日刊SPA!プラスで掲載した記事において、この主張はいかにでたらめなのか、解説した。要するに、この三つの項目はクリミア帰属と何の関係もないことであり、それを根拠にロシアによるウクライナへの侵略と領土強奪を正当化できない。  さらに12月9日に掲載した記事では、そもそもクリミア帰属問題とは関係のないロシアの主張にすら多くの嘘が含まれていることも明確にした。だから、仮にクリミア半島の歴史も、人口構成も、ウクライナへの編入も、クリミア帰属を議論する時に考慮したとしても、「クリミアがロシア領である」という根拠は乏しい。少なくともウクライナ領である根拠より弱い。  このロシアによるプロパガンダがデタラメであることは明確だが、それでもなお、ロシアのプロパガンダリストがこれを流し続けている。なぜか。これは筆者の推測だが、ロシアは自分が何の正当性もない一方的な侵略を犯したことを認めるわけにはいかない。「自分の非を認めるロシア」という姿は、多分、「自分の非を認める中朝韓の三国」よりもっとありえない話であるかもしれない。  当然、自分が強奪した領土を正当な持ち主に返すなども、昔からお墨付きの泥棒国家ロシアがするはずがない。かといって、自分の侵略を正当化し続けないと、面子が立たない。だから仮に既に正当性のないことが明確になっているプロパガンダパターンであっても、仕方がなくそれを流し続けるしかないのではないだろうか。  とはいえ、先述した定番のプロパガンダパターン以外にも、ロシアはいくつかのパターンを流しているので、これについては解説しよう。ただ、注意すべきなのは、今回紹介するロシアのプロパガンダパターンへの反論や解説自体もまた、クリミアのウクライナ帰属の根拠ではなく、あくまで補足情報である。繰り返しになるが帰属根拠は12月3日の記事で述べた通りである。

【パターンA】ウクライナがクリミア領有の根拠をソ連時代の編入に求めるのはおかしい

 プロパガンダパターンの一つとは、例えばウクライナはソ連支配を批判、否定するのであれば、ソ連時代におきたクリミア半島のウクライナへの編入を根拠にクリミア領有を求めるのはおかしい、という主張である。  この主張はあまりにもおかしすぎるので、真面目に反論するのも馬鹿らしい。しかし、ここで敢えて、この荒唐無稽な主張にも答えておこう。  この主張は最初から中に矛盾を抱えている。つまり、ではもしウクライナがソ連時代を肯定するのであれば、ソ連時代の決定は根拠になるのか、ということである。今のロシアはソ連時代を肯定しているわけだから、ウクライナはロシアに「あなたたちが絶賛しているソ連時代の決定を尊重しなさい」という要求が成立するのか、ということである。  そもそもウクライナがソ連時代をどう評価するのかは、ウクライナの国内問題であるので、独立国の歴史認識について他国が介入してはいけない。まして、独立国の領土を力で強奪して、その独立国の歴史認識を根拠に、強奪を正当化するのは荒唐無稽な言い訳に過ぎない。

ウクライナはソ連領だったおかげでクリミアを手に入れられたのか

 ちなみに、このパターンは、「ウクライナはソ連に入っていたゆえに、クリミア半島を手に入れた」という仮説を前提にしているのだが、この仮説も正しいとは限らない。  ロシア帝国の崩壊の後、広大な旧帝国領土には、多くの戦乱があった。よく単純に赤軍対白軍の戦争と認識されているが、あの戦争には非常に多くの参加勢力があって、お互いに戦いあっている。誰対誰なのかと言えば「みんな対みんな」が最も正しいと思う。「敵の敵は敵」というのが当たり前な時代。その中でウクライナの独立のために戦っていた軍隊もあった。実際にわずか2年間だが、その時ウクライナは独立していた。ウクライナ軍は赤軍とも、白軍とも、または無政府主義者のマフノ軍とも戦っているが、白軍は途中で敗退するので、最終的にウクライナは赤軍に敗北し、占領された後、ソビエト連邦に組み込まれた。  そこでだが、もし赤軍がウクライナを襲わなければ、どうなったのか。断言はもちろんできないが、この場合はウクライナは独立した可能性が高い。そして、もしウクライナがその時独立したら、地理的な条件からして、クリミア半島を領有することも十分可能であった。恐らくこの場合はクリミアタタール人に幅広い自治権を与える必要があったが、いずれにしても、もし赤軍がウクライナを襲わなかった場合はウクライナは独立して、クリミア半島を領有したシナリオは十分描ける。だから、クリミアはソ連時代の産物であり、ウクライナはソ連に入らなければ、それを領有しなかったというのも、一方的な見方なのではないかと筆者は思う。

クリミアがウクライナの不可分な領土であることに変わりはない

 しかし、仮にそうだとしても、それで何が変わるのか。実は何も変わらない。ソ連時代はウクライナにとって過酷な時代で、現在のウクライナの歴史認識ではウクライナはソ連の被害者だったということがあっても、クリミア半島はウクライナの不可分な領土であることに変わりはないのだ。これは国際常識である。  例えば、ポーランドは共産主義時代について、「共産主義による占領時代」と酷評している。しかし、ソ連がドイツに勝った結果、ドイツがポーランドへ割譲した領土をポーランドは当然、ポーランドの不可分な領土だと認識している。多くの国は外国の支配の経験がある。というか、今の世界の独立国家の約3分の2ぐらいは、何らかの形で外国の支配を経験している。  では、外国の支配を受けたことがある国は、外国の支配時代に確定された国境や、支配者に作ってもらったインフラを放棄しなければならないのか。当然そんなことはない。外国による支配を酷評しても、その時代から残った数少ない役に立つ産物を誰も自ら放棄しない。だからウクライナもソ連時代を批判、否定しても、その時代に手に入れたとされている領土を放棄する必要は全くない。

【パターンB】ロシアを批判するウクライナはまるで韓国みたいだ

 次に触れたいのは、日本国内にいるロシア(もしくは親ロシア)のプロパガンダリストが使う、日本に特化した反ウクライナのプロパガンダパターンである。日本の愛国者を装う親ロシアのプロパガンダリストは、時々ウクライナを貶めるために、ウクライナを韓国に例える。つまり、ウクライナがロシアを批判することは、韓国が流す反日ヒステリーと同じだ、いうプロパガンダパターンだ。  これは極めて無礼な発言であるだけではなく、悪質な印象操作である。多くの日本人は韓国の反日ヒステリーにうんざりしているので、ウクライナを韓国に例えることで、日本人にウクライナの悪いイメージを植え付けようとする巧妙な情報工作である。  もちろん、現実は全く違う。そもそも、ウクライナが受けたロシアによる過酷な支配と韓国が日本にしてもらった「優遇統治」は全く違う。だから、韓国が日本を批判するのは筋違いであるのに対し、ウクライナがロシアを批判する理由は十二分にある(ウクライナがロシアから受けた支配と韓国の日本による統治の比較については、拙著『日本を取り巻く無法国家のあしらい方――ウクライナ人が説く国際政治の仁義なき戦い』《育鵬社》の第一章を参照されたい)。  現実では、ウクライナは多くの国内問題を抱えている。その中でロシアのせいで起きた問題もあれば、ロシアと関係なく起きた問題もある。多くの問題はウクライナ人の至らなさの結果として起きているのも事実であり、それをロシアのせいにするつもりは全くない。しかし、ロシアのせいで起きた問題もあるので、それによってロシアを批判することは何が悪いのか。

ウクライナはソ連時代の過酷な支配に対して一度も謝罪や賠償を求めたことはない

 根本的な違いは次のとおりである。韓国が日本にしてもらった統治の中身を見れば、謝罪と賠償を要求するようなことは何もないのに、韓国はしつこく何度もそれを要求するだけではなく、反日ヒステリーを撒き散らしている。  一方、ウクライナはロシアから本当に過酷な支配を受けたので、本来謝罪や賠償ぐらいを求めるのが自然だが、ウクライナはロシアに謝罪と賠償を求めたことは、一度もない。もしそれが間違いだと言うのなら、是非指摘していただきたい。ロシアのプロパガンダリストの皆様は私よりよほど情報源が豊富であろうから、もしウクライナ政府が一つでも、1991年以前のロシアの支配について、ロシアに正式に謝罪や賠償を要求したことがあるということであれば、是非教えていただきたい。もしそれがあったら、私は素直に謝罪する。  まとめると、韓国は要求する道徳的な権利はないのに要求するのに対して、ウクライナは要求する権利があるのに、要求していない。だからウクライナと韓国と同列に並べるのは悪質な印象操作である。  ちなみに、ウクライナはロシアに対する謝罪・賠償の要求どころか、2014年以前にウクライナではロシアを批判すること自体少なかった。もちろん批判もあったがそれは言論空間の主流ではなかった。主流の論調は「ロシアとの友好」であった。ロシア批判が主流になったのは、ロシアがウクライナに対して侵略した2014年3月以降である。  当然、今はウクライナはロシアに賠償を求めている。しかし、それはかつての支配に対する賠償ではなく、2014年から今まで、ロシアが起こした戦争の被害に対する賠償である。ロシアがクリミア半島や東部二州の一部を占領して、東部二州で戦争を起こしてことによって、ウクライナは大きな被害を受けている。既に13000人の死者が出ている。住居を失った人は10万単位、国内難民は100万単位。多くのインフラも破壊された。ロシアに占領された地域の多くの財産が失われた。金銭的には天文学的な数字だ。このような今受けている被害に対する賠償責任を、ウクライナはロシアに求めている。昔の支配についてではない。

【パターンC】ウクライナがクリミアを失ったのは2014年の政権の行動の結果

 また、よくロシアに使われているプロパガンダパターンとは、ウクライナがクリミアを失ったのは2014年にできた政権の行動の結果だ、ということである。ロシアのプロパガンダによると、2014年にウクライナでクーデターが起きた(当然、これ自体はウソ。クーデターは起きていない)ので、クーデター政権の排他的な行動に怯えたクリミア住民がウクライナから離脱を決めたということになっている。これで、ロシアは軍事侵略を正当化しようとしているが、これもまた荒唐無稽なデタラメである。2014年2月にできた政権の行動の結果、クリミアは失われた、という説は3重もおかしい話である。  第一に、新たにできた政権の行動はウクライナ国内の問題であるので、それを口実に領土を強奪してもいいという理屈は通用しない。ウクライナ国内についてはウクライナ人が決めるべきであり、それについて外国のロシアは口を出す権利がない。内政干渉は許されるものではない。唯一の例外とは、例えば虐殺など、極端に残酷な人権侵害が起きた場合のみである。ちなみにこの場合でさえ、許されているのは、一時占領のみであり、領土強奪と併合ではない。  当然、政権交代後、このようなことは起きていないし、起きる兆しもなかった。このような極端に酷い人権侵害以外の場合は、外国政府の政策や行動を理由にその国の領土を占領することは許されない蛮行である。まして領土の強奪・併合など、もってのほかだ。  だからロシアの行動は弁明の余地のない、正真正銘の野蛮な侵略にほかならないのだ。もし他国の政府の行動や政策が領土強奪の理由になるのであれば、世界は戦乱に陥るだろう。

ロシアはウクライナ新政権発足前にクリミアを侵略している

 第二に、この理屈は時系列的におかしい。ロシアはウクライナ新政府の行動がクリミア侵略の理由だと言っているのだが、クリミア侵略はウクライナ新政権がいかなる行動をとる前から始まっている。政権交代は2014年2月22日に起きた。その日に前大統領は責務放棄で解任され、新しい大統領代行が就任した。新内閣はその4日後、2月26日に発足した。  しかし、ロシア軍がクリミア侵略を始めたのは少なくとも2月26日より前だ。なぜなら、その日から既にウクライナのメディアは、クリミア半島内にはロシア軍による不穏な動きがあると報道していたからだ。  ここにロシアの防衛省のメダルがある。

ロシア防衛省のメダル。周りには「ロシア連邦防衛省」と書かれ、真ん中は「クリミア帰還」と作戦の期間「2014年2月20日‐2014年3月18日」とある。

 このメダルは「クリミア帰還」と言って、クリミアの侵略に参加したロシア軍人及び協力者に授与されている。周りには、「ロシア連邦防衛省」と書いて真ん中は「クリミア帰還」と作戦の期間「2014年2月20日‐2014年3月18日」と書いてある。そう、作戦開始は20日ということになっている。しかし、政権交代は22日だ。つまり、ロシアによるクリミア侵略が政権交代が起きたから実行したのではなく、今なら無抵抗にクリミアを強奪できると判断したから侵略を実行したのであろう。  さらに、ここまでうまくいった作戦であったので、何の準備もなくいきなり実行されたとは考えにくい。ここからは推測だが、ロシアはクリミア侵略の準備をその前から行っていたと思われる。つまり、2月22日の政権交代よりずっと前のはずだ。だからクリミア半島の強奪はロシアが新政府の行動を見て実行したのではなく、その政権ができる前から作戦を練って実行したのだ。つまり、新政権の行動とは関係なく、ロシアは最初からクリミア半島の強奪を目指した。もし新政府の行動がロシアの侵略の動機であったのであれば、侵略の開始日は、どんなに早くても新政権発足後、数週間が経ってからになるはずである。

ロシアの反ウクライナプロパガンダの方が韓国的だ

 第三に、そもそも実態を見ると、新政権は批判されるような悪いことをしていない。日本国内にいるロシアの(もしくは親ロシアの)プロパガンディストは、ウクライナと韓国に例えるという悪質な印象操作をしているが、実際はどっちかというと、韓国の反日プロパガンダのようなことをやっているのはロシアである。ロシアはウクライナ新政府についてあることないこと(実際はないことないことだが)を言いふらして、反ウクライナヒステリーを煽っていた。5年以上経った今でも、毎日のように煽り続けている。あの執念は韓国の反日プロパガンダに負けていない。  しかし、実態を見ると、ウクライナ新政府は何も悪いことはしていない。前の売国政権がメチャクチャにした国を何とか立て直そうとした。ウクライナ新政府はロシアに敵対的な行動を一切しなかった。ウクライナ国内にいる親ロシア住民には抑圧どころか、むしろ歩み寄りを見せた(筆者の意見では「歩み寄り過ぎた」のだが)。  新政権が失敗したとすれば、それはウクライナ東部に起き始めた親露暴動に寛大すぎたことだけである。あの暴動をもっと早く力で鎮圧できれば、ロシアはウクライナ東部へ正規軍を送る隙がなかったかもしれない。  なお、新政権の行動やロシアの東部侵略はロシアのプロパガンダの大きなテーマになって、分量が多くなるため、これについてはまた改めて解説する予定である。

ソ連時代のクリミア移譲は違法だった?

 最後の第四は、「ソ連時代のクリミア移譲は違法だった」というプロパガンダについて触れたい。もちろん、これ自体も何の意味もないロシアの言い訳である。独立した時点でクリミアはウクライナ領土であったので、ソ連時代にどんな決定によって移譲がなされたかも、全く関係がない。  しかし、実際はこの事実をさておいても、この話はメチャクチャである。クリミア強奪の前に「クリミア半島の移譲は違法だった」なんて、そんなことを言う人はほとんどいなかった。まして、ロシアの高官はそんなことを言っていなかった。 これを言い出したのは、明らかにクリミア強奪を弁明することを正当化するためだけである。もちろん、そんなことをいうロシアの高官やプロパガンディストにとっては、ソ連時代のクリミア移譲は法的にどうだったのか、ということ自体はどうでもいい。単に侵略を弁明したいだけである。  では実際はどうだったのか。仮にソ連時代の移譲の決定がソ連の法律に違反していたとしても、それはクリミア半島がウクライナの不可分な領土であることに何の影響もないのだが、どうも、実際は合法だったようだ。筆者は法学者ではないので、ソ連の法律の細かい規定までは分からない。しかし、クリミアの移譲は当時のソ連の指導層の共通認識だったことは間違いないし、ソ連の権力構造の機関において以下のように手続きがなされていた。 1954年 1月25日 ソ連共産党中央委員会幹部会はクリミア移譲を決定。

共産党中央委員会幹部会の議事録。クリミア移譲について。

2月5日 ロシア・ソビエト連邦社会主義共和国閣僚会議は、クリミア移譲は合理的だと判断した。

ロシア・ソビエト連邦社会主義共和国閣僚会議のクリミア移譲についての閣議決定。

 そして、ロシア・ソビエト連邦社会主義共和国最高会議幹部会にクリミア移譲を提案した。同日、ロシア・ソビエト連邦社会主義共和国最高会議幹部会はクリミア移譲を決定し、その決定を承認のためにソビエト連邦最高会議幹部会へ送った。

ロシア・ソビエト連邦社会主義共和国最高会議幹部会のクリミア移譲についての決議。

2月12日 ロシア・ソビエト連邦社会主義共和国最高会議幹部会の決定を受けて、ウクライナ・ソビエト社会主義共和国最高会議幹部会は、ソビエト連邦最高会議幹部会にクリミア移譲を決定することを請願した。

ウクライナ・ソビエト社会主義共和国最高会議幹部会の、クリミア受け入れに関する決議。

2月19日 ソビエト連邦最高会議幹部会はクリミアの移譲を議決した。

ソビエト連邦最高会議幹部会のクリミア移譲の決議。

ソビエト連邦最高会議の広報誌。ソビエト連邦最高会議幹部会の、クリミア移譲の決議について。

4月26日 ソビエト連邦最高会議は「クリミア州のロシア・ソビエト連邦社会主義共和国からウクライナ・ソビエト社会主義共和国最高会議幹部会への移譲に関する法律」を採決した。

ソビエト連邦最高会議の議事録。「クリミア州のロシア・ソビエト連邦社会主義共和国からウクライナ・ソビエト社会主義共和国最高会議幹部会への移譲に関する法律」が採決される。

 この法律によって、2月19日の幹部会の決議が承認され、ソ連憲法において、クリミア州の帰属をウクライナ・ソビエト社会主義共和国へ変えた。

ソ連の憲法(1936-1977)。クリミア半島はウクライナ・ソビエト社会主義共和国の領土として明記されている。下から三行目、左から二番目の単語。

7月2日 ロシア・ソビエト連邦社会主義共和国の憲法からクリミアの記述が削除された。 7月17日 ウクライナ・ソビエト社会主義共和国の憲法にクリミアが明記された。  以上のように、クリミアの移譲は関係するすべての国家機関において手続きを経た。細かいところで、手続き上の不備があった可能性はゼロではないが、このような経緯から明らかなのは、クリミア移譲は指導層や会議の議員の共通の意思であったということだ。そしてその後、ソ連の法体系の中でクリミア半島はウクライナの一部として認識された。だから細かい手続き上の不備があったとしても、移譲そのものが違法だったという理由にはならない。従って、クリミアの移譲は合法だったのである。  本稿では、主に4つのプロパガンダのパターンを解説した。だが、繰り返しになるが、クリミア半島のウクライナ帰属根拠は、本稿ではなく12月3日の記事に述べた通りである。本稿の目的とは、ロシアの悪質な反ウクライナプロパガンダへの反論と、正しい認識を日本人の皆様に広めることである。参考になれば幸いである。 【グレンコ・アンドリー】 国際政治学者。1987年、ウクライナ・キエフ生まれ。2010年から11年まで早稲田大学で語学留学。同年、日本語能力検定試験1級合格。12年、キエフ国立大学日本語専攻卒業。13年、京都大学へ留学。19年3月、京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程指導認定退学。アパ日本再興財団主催第9回「真の近現代史観」懸賞論文学生部門優秀賞(2016年)。ウクライナ情勢、世界情勢について講演・執筆活動を行なっている。著書に『ウクライナ人だから気づいた日本の危機――ロシアと共産主義者が企む侵略のシナリオ』『日本を取り巻く無法国家のあしらい方――ウクライナ人が説く国際政治の仁義なき戦い』(以上育鵬社)など。
日本を取り巻く無法国家のあしらい方――ウクライナ人が説く国際政治の仁義なき戦い

ストーカー=韓国 チンピラ=北朝鮮 マフィア=ロシア ヤクザ=中国 無法国家に囲まれた日本に、ウクライナ人が仁義なき戦い方を説く!

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