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「魔改造」を巡る模型業界の苦渋 海賊版フィギュア転売者逮捕を受けて

 5月30日に、中国で製造されたと見られる人気マンガ『ワンピース』の海賊版フィギュアを無断で販売したとして、著作権法違反容疑で都内在住の男性が逮捕された。男性は中国の業者から改造された海賊版フィギュアを、1体およそ5千円で購入。昨年夏ごろからネットオークションなどで販売を始め、約100万円の売り上げがあったという。  同作品の著作権を持つ東映アニメーションは「海賊版など法律上問題がある製品については、関係機関と連携し適切に対応している」というように、メーカーも海賊版氾濫には頭を悩ませ、対応を強めている中での逮捕となったわけだ。  今回の逮捕容疑は海賊版フィギュアの輸入・販売による著作権法違反。しかし、ネットではそのフィギュアに施されていた「改造」もその一因だったのではないかという声が挙がっている。  その「改造」とは、「魔改造」 と言われるものだ。「魔改造」とは、フィギュアやガレージキットの服を削るなど極端な改造を加え、裸もしくはそれに近い状態にするエロティックな改造のことだ(車や飛行機などをロボット変型などに改造する例もある)。こうした「魔改造」製品は、逮捕者が出た現在もオークションサイトを中心に流通しており、秋葉原の路上やレンタルスペースなどでも、怪しげな改造フィギュアが販売されているという。  こうした魔改造及び海賊版フィギュアの流通について、フィギュア業界関係者は次のように語る。 「海賊版や改造フィギュアは買い取っていません。個人が制作した、成人向け魔改造フィギュアの相談も来ますが、お断りしていますね」(中古フィギュア販売業者) 「版権シールが無い製品は送り返すほど気をつけています。正規品であっても胸を裸にする等の改造、2体を1体にする等、いわゆる魔改造はしません。今回逮捕者が出たという事で、大変迷惑な話です。オークションなどでも、自分の作品の完成見本写真を、無断でコピーされ使われるなど、トラブルもあったので時々チェックして通報をしています」(模型制作代行業者)  2003年にはリカちゃんのフィギュア「リカヴィネ」の魔改造が大ブームになり、販売元のタカラが抗議する騒ぎもあった。キャラクターのイメージを損ねかねない魔改造については、メーカーにとっても苦々しい存在といえる。しかし、正規のフィギュアであれば購入者が改造を施すのは個人の自由だと概ね版元も黙認しているのが現状なのだ。  こうした微妙な関係のもとに存在する「魔改造」フィギュア。そんな中で、海賊版が横行することは、ユーザーの楽しみ方を狭め、自らの首を絞めることにも繋がりかねないのだ。 「海賊版は絶対にダメ。消費者が買わないことも大事。買う人がいるから流通してしまうことを忘れないでほしい」(模型愛好者) <取材・文/近藤智大>
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