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路上での排便は是か非か?中国世論を二分する大論争

 今中国で、人民を二分する大論争が巻き起こっている。テーマは「公然でのウンコは是か非か」である。  発端は、中国版ツイッター「微博」にアップされた一枚の写真。そこには、公衆の面前でズボンを下ろしてしゃがみこみ、排便をしている少年の姿が写されていた。  撮影場所は広州市の地下鉄車内。少年は父親と一緒だったが、父親は傍観するばかりだったという。写真は大きな注目を集め「野蛮な原始人」「親の教育はどうなっているんだ」など批判が相次いだ。  しかし一方で、「農村ではよくある光景」「俺たちもみなそうして育った」と、少年を擁護する意見も少なくなかったのだ。  そんななか、こんな事件も。『楚天都市報』(11月17日付)によると、武漢市内の路上で大便をしていた女児に注意した清掃員が、「邪魔するな!」と母親に傘で殴られて負傷したのだ。「公然ウンコ」を“当然の権利”と信じて疑わない者すらいるのである。  仏山市で貿易業を営む林田岳男さん(仮名・48歳)も、意外にも公然ウンコに理解を示す。 「中国の都市部は、絶対的に公衆トイレが不足しています。さらにスタバやマックのトイレも長蛇の列。飲食店のトイレには『大便禁止』と書いてあったり、ウンコができないように大便器に金網がかけてあることもある。中国の下水は配管が細く、詰まり対策だと思いますが、こうした排泄インフラの乏しさに加え、衛生状態の悪い中国では子供はお腹を壊すことも多く、追い詰められるのもわかる」
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路上で排便する女児。中国では紙を敷けばマナー的には許されるようだ

 このように、子供の公然ウンコに関して、中国社会は比較的寛容なようだ。深圳市在住の会社員・岡本宏大さん(仮名・25歳)も、自らの目撃談を語る。 「市街中心部の路上で、露天商が連れていた5歳くらいの女児が突然尻を丸出しにして屈み始めた。これには、近くにいた城管がすぐに注意していましたが、彼女はどこからか古新聞を持ってきて路上に敷き、その上に堂々と排便を始めた。するとその城管は、注意するどころか『いい子だ』とばかりに彼女を褒めていた(笑)。つまり彼は『路上でウンコするな』ではなくて『路上を汚すな』と注意していた。『注意するの、そこ!?』と突っ込みたくなりましたよ」 ⇒【閲覧やや注意】画像はこちら
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 さらに、公然ウンコは子供だけの特権ではないようだ。 「渋滞の高速道路で、前の車を運転していた中年男性が突然降りて、車道の真ん中でブリブリやりやがった。緊急事態とはいえ、車の中でやるとか道端でやるとか方法はあるだろうに。『見てくれ』と言わんばかりでした……」  子供から大人まで、人前での排泄を厭わない中国人たちについて、中国在住のフリーライター・飯塚竜二氏はこう語る。 「中国人は日本人と比べて子供の行為にはかなり寛大。加えて、そもそも中国人のルーツを遡れば、広大な荒野を転々とする騎馬民族。どこでも豪快に排泄していた時代の記憶が染み付いているのかもしれません。ニーハオトイレの愛称でお馴染みの目張りのない大便器や、催せばどこでも排泄できる乳幼児向けの股割れパンツなどを生み出したのも、そうした時代の名残と言えるのでは」  もはや公然での排泄は、保護されるべき中国の伝統文化!? <取材・文/奥窪優木> 週刊SPA!連載 【中華人民毒報】 行くのはコワいけど覗き見したい――驚愕情報を現地から即出し
1980年、愛媛県生まれ。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2008年に帰国後は、週刊誌や月刊誌などに寄稿しながら、「国家の政策や国際的事象が末端の生活者やアングラ社会に与える影響」をテーマに地道な取材活動を行っている。2016年に他に先駆けて『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社刊)など。最新刊『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社刊)発売

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