【あまちゃん聖地巡礼】夜の久慈はスナック天国だった
9月末のラストスパートに向けて、ますます注目が集まるNHKの朝ドラ「あまちゃん」。
ついにはプロの書き手たちが「あまちゃん論」を寄稿した『あまちゃんファンブック おら、「あまちゃん」が大好きだ!』まで発売されることに(扶桑社刊・1470円)。
同書の特集でロケ地となった岩手県・久慈市をルポしてきたライターの安田理央氏が、地元の人に教えてもらったおすすめスポットを教えてくれた。
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約6時間の長旅でしたが、それだけの時間をかけて行っただけの価値は十分にあった旅でした。ドラマで見た、あの光景が目の前に広がっている。ドラマに熱中している者に取っては、なんとも感動的な体験なのであります。
あの観光協会の駅前ビルが! あの袖が浜の灯台が! あのヒロシの監視小屋が! あの「梨明日」のモデルになった喫茶店が! あのお座敷列車が! あのユイちゃんが「アイドルになりたーい!」と叫んだ駅のホームが! 見るもの見るもの、ファンにはたまらないわけですよ。しかも取材者の特権で、あの南部もぐりを体験させてもらったり、勉さんの琥珀の発掘坑道に入らせてもらったり……。(詳しくはファンブックに掲載)
僕がこの旅行の様子をTwitterでツイートしていたら、「あまちゃん」ファンの友達が言いましたよ。
「この、あま充め!」
北鉄北三陸駅のモデルになった三陸鉄道の久慈駅にはもちろん喫茶リアス(スナック梨明日)は存在しませんが、夏ばっぱのモデルとなったと言われる女将がいる「リアス亭」が営業中。一日限定20食の「うに弁当」は売り切れでしたが、「朝7時に来れば買えるよ」とのこと。翌朝7時に行ったらさすがに一番でしたが、すぐに行列が。じぇじぇじぇ。
うに弁当には蒸したウニがご飯の上にたっぷり。しかもご飯にもウニが炊きこんであります。おお、ウニの味が濃い! こんなにウニ、いらないです!と思うくらいです。これで1360円は安すぎ。
⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=497441
そう言えば、京王駅弁大会で食べた北三陸野田村の鮭いくら弁当も、いくら多すぎ!と思うほどでした。こちらの人は、サービス精神がすごいです。容赦ないです。
喫茶リアスのモデルになったという駅前の「喫茶モカ」もロケ地巡礼ファンの聖地となっています。ここでは、“あばずれの食い物”ことナポリタンと、名物タマゴサンドをいただきました。ナポリタンは濃い目の味付けとソーセージが美味しく、そしてタマゴサンドはふんわりとしたオムレツが優しい味わい。何もかもが懐かしい味なんです。
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この店には出演者たちが頻繁に訪れたみたいで、壁にはサインや記念写真がいっぱい。鉄拳や大友良英さんのサインまでありました。
喫茶モカの向かいの居酒屋「ひさご」。ここも出演者やスタッフがよく訪れた店ということで壁一面に出演者のサインが貼ってあります。
この店では、岩手の郷土料理であるひっつみ(すいとんに似た汁物)や大きなだし巻き玉子が人気。リーズナブルでどれを食べても美味しくて、しかもくつろげる雰囲気です。
9月末までの間、土日だけ運行している三陸鉄道のお座敷列車はたいへんな人気のため要予約です。
久慈・田野畑間を往復して約2時間。座席は4人がけの掘り炬燵式。お座敷列車弁当は要予約で3種類。ウニ丼(1300円)、ほたて弁当(1050円)、ウニあわび弁当(1500円)とあるわけですが、せっかくなのでここは一番豪華なウニあわび弁当を。
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アワビ! ウニ! カニ! いくら! なんですか、この豪華なラインナップ。バチが当たりそうです。ウニの美味さは言うまでもないですが、アワビがまたシコシコとした歯ざわりと深い味わい。持ち込みもOKなので持参した久慈の地酒・福来がよく合います。
しかも窓の外には「あまちゃん」で見たあの景色ですよ。なに、この天国。脳髄の奥まで痺れそうな多幸感です。
というわけでグルメ中心に紹介しましたが、「あまちゃんファンブック」では誌面の都合で書けなかったのが、久慈の夜のこと。
実は久慈というのは、町の規模のわりに飲み屋の軒数が大変多いという「夜の街」でもあるのです。もう、これは久慈の夜を体験するしかないでしょう。春子さんやユイちゃんや美寿々さんみたいな女性のいるスナックがあるかもしれないし……。
まずは、既に5月に聖地巡礼をしている漫画家のなかはら・ももたさんからの情報でおすすめされていた「ふるさと」という駅近くの焼き鳥屋へ。小池徹平などの出演者も飲みに来たとのことで、壁にはサインが飾ってあります。
焼き鳥や馬刺しは美味しく、大将も色々と話しかけてきてくれるので一人客でも十分楽しめます。というか、隣り合ったお客さんとも仲良くなれちゃうようなお店なんですよ。
「この後、飲みに行こうかと思うんですけど、いいお店ありませんか?」と言うと、隣にいたお客さんが「じゃあ、『きらり』がいいんじゃないか。安いし、楽しいぞ。よし、おれが電話しておいてやるから」と、予約までしてくれました。
その店は十分歩いていける距離なんですが、それでもタクシーを呼んじゃうのが久慈流。送迎は無料でワンメーター500円なので、なんか申し訳ない感じなんですが地方の歓楽街だとこれが常識なんですかね。
飲み屋が多いとは聞いていましたが、確かに街にはスナックの看板がいっぱいです。そんななか、教えられた「きらり」に入ってみました。知らない街で初めての店に入る時はいつも緊張しますが、とりあえず紹介してもらっているので、少し安心かな。
「よー、遅い遅い」
店内のソファ席には、この店を教えてくれたお客さんが女のコをはべらせてご機嫌じゃないですか。え、さっきは「おれはこれから接待だ」と先に帰ったはずなのに……。
というわけで、この日は初対面というか、偶然隣あっただけのこの警備会社の社長であるDさんにご馳走になってしまいました。お店の女のコたちもみんな明るくて楽しいし、最後はお客として来てた女の子たちも一緒に飲むことになったりして。春子さん系、美寿々さん系の方が多かったです、はい。
何を食べても飲んでも美味しい久慈。袖が浜のモデルになった小袖海岸の出店で食べた「海女磯ラーメン」も忘れられません。
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ムール貝やウニ、ホタテ、エビが入って半玉500円(1玉800円)とは信じられないくらいの美味しさだったし、もう正直言ってですね、「あまちゃん」とか関係無しに、いいところだったんですよ。行ったばかりだというのに、もうまた行きたくなってるんですよ。
9月19~22日は巨大な山車が町を練り歩く「久慈秋祭り」もありますし、「あまちゃん」ファンでも、そうじゃない人でも、ぜひ訪れてみてください、久慈。 <取材・文/安田理央>
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8月28日発売 扶桑社刊 定価1470円
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