“ウラン残土”リサイクルレンガが一般流通!?
◆[原発のゴミ]が引き起こす地獄絵図(4)
原発だけでなく、核関連施設も“核のゴミ”の処分に困っている。昨年、相沢議員のもとに一通の内部告発文書が届いた。それは日本原子力研究開発機構の下請け会社の社員からで、そこには「会社から人形峠のウラン残土をリサイクルしたレンガを買うよう強制された。調べると、機構の幹部が会社に乗り込んでレンガ購入を打診し、会社が断れずに買った」と書かれていた。
当初は希望者にレンガを買わせようとしたようだが、放射性廃棄物のリサイクルレンガを買う者はおらず、会社が費用を負担して社員に配ったのだという。
膨大なウラン残土の処分に困っているのが、人形峠環境技術センター(岡山県)。ここでは長年、ウランの精練や転換を行ってきたが、’01年に事業を終了した。現在は、大型解体に向けての準備中だ。かつてウラン採掘をしていた人形峠では、採掘後に放射線を出す膨大な残土が残った。この撤去をめぐり、地元住民は裁判を起こし勝訴したのだが、この処理に困った機構は、09年からそれを土と混ぜ、レンガとして売り出していたのだ。
この人形峠では、毎時0.1マイクロシーベルトの低レベル放射性廃棄物は厳格に保管されているのに対し、最高値で毎時0.35マイクロシーベルトを検出したウラン残土をリサイクルしたレンガが通信販売や店舗で一般に売り出されている。放射線値の高いほうがなぜ一般流通できるのか?
この疑問に、匿名を条件にして機構本部の職員が答えてくれた。
「簡単な話。低レベル放射性廃棄物は、『原子炉等規制法』で厳重な管理が求められますが、残土やレンガはその対象外だからです」
ウラン残土は法の網から漏れていたのだ。そして、150万個ものレンガは内部告発のとおり、果たして機構内部だけで使えなかったのだ。
「やはり機構内部だけでは使い切れず、立場の弱い下請け会社などに押しつけているのでしょう」(相沢議員)
ウラン残土処分の問題は、これで解決したわけではない。なぜなら、レンガになった残土は、全体の0.6%にすぎないのだ。人形峠周辺にはいまだに、今も放射線を出しながら総体積48万立方メートルもの行き場のない残土の山が存在している。
もし線量が下がったらどう処分するのか?
案内をしてくれた職員は「わかりません」と答えるだけだった。
ウラン残土だけではない。人形峠には、低レベル放射性廃棄物がドラム缶で1万6091本、解体廃棄物の容器が1230基、さらに、11tが漏れれば、半径800m以内の人は即死と言われる六フッ化ウラン(劣化ウラン)が3843tも保管されている(’09年9月末時点)。
解体廃棄物とは、施設で使ってきた機器、金属類や建材のことだが、当然放射線を浴びている。倉庫入り口でも毎時0.14マイクロシーベルトと、低レベル放射性廃棄物同様に扱わねばならない放射線が出ている。
職員に「これがどう処分されるのか」と尋ねてみた。職員はこう答えたのだ。
「これは『核燃料物質によって汚染された物』との分類で、核廃棄物ではありません。通常の産廃として処分されます」
これもクリアランス対象物としてリサイクルされるということだ。だが、どこに流れるのか?
六フッ化ウランにしても、今まで11回、福井県の「もんじゅ」の燃料として60tが送られただけで、残っている数千tをどうするのか? いずれの質問にも、担当職員は「これからの議論です」と答えるだけだった。
東京電力の福島第一原発、そして中部電力の浜岡原発。解体が実現すれば、東海発電所の数十倍もの規模になるこれら原発では、自社内の埋設やリサイクルだけでは間に合わないほどのさまざまな核廃棄物が膨大に発生する。
「これはおそらく氷山の一角です。もともと、“核のゴミ”を処分する方法を真剣に考えてこなかったツケがきています。今まで生み出したゴミだけでも、とても処分しきれない。低レベルとはいえ、行き場を失った放射性廃棄物がリサイクルされ、出回っていることは大問題です」(相沢議員)
行き場を失ったウランの山が何と48万立方メートル!
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