ライフ

水辺から見る江戸・東京の歴史「日本橋歴史探訪クルーズ」

日本橋歴史探訪クルーズ

日本橋歴史探訪クルーズ

 2020年東京オリンピック開催に向け、東京は再開発が加速している。五輪会場地となる湾岸エリアをはじめ、首都高の大改修など、さまざまな場所で工事が進行しているのだ。電車やバスに乗っていても、その変化を感じることができるが、水上からじっくりと眺めてみるというのはいかがだろうか?  水上から眺めるいまの東京の姿とは? 先日開催された「都心の水辺探訪クラブ」による「日本橋歴史探訪クルーズ」に参加してみた。東京メトロ・茅場町駅付近からスタートし、日本橋を経由して常磐橋橋でUターンする往復約90分(5km)のコースだ。 ⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/681772/twf_02  企画者の中村俊彦さんによると、参加者は「歴史好きの女性が多いのか、女性が多いです。男性は写真好きの方が1人で参加していますね」とのこと。この日も女性参加者が多く、他には小さな子ども連れの家族もいた。10人乗りのゴム製ボート『Eボート』に乗り込み、ライフジャケットを着用し、木製のパドルを持ってスタート。観光船と違い、手を伸ばせば水面に届く視線の低さが新鮮だ。
日本橋歴史探訪クルーズ

10人乗りのゴムボートで出発

◆首都高の高架下道路は川を埋め立てた跡が多数  首都高速6号向島線の高架下は、現在駐車場や道路になっているが、かつては箱崎川が流れていたという。ほかにも埋め立て跡は多数あり、川から眺めると堤防の色がその部分だけ異なることがよくわかった。関東大震災の瓦礫で埋めたところもあるという。首都高は現在でも多くの区間が河川上の高架となっており、大規模更新が行われる竹橋~江戸橋間などが、今後どんな景観になるのか注目だ。
日本橋歴史探訪クルーズ

首都高の高架下は埋め立てられた場所も

◆歴史を感じる建造物がズラリ。地上からは気づかない所も  江戸時代に石を積み上げて造られた濠や、明治時代にできた橋は、今もそのままの形で残されている。なかには、当時の石工が名前や屋号などを残した傷跡も。手の届きそうな間近で見られるのは、手漕ぎのEボートならではだろう。日本橋の裏側には、東京大空襲で焼夷弾を受けた船舶がぶつかって焦げた跡などが今でも残っている。
日本橋歴史探訪クルーズ

お濠には歴史を感じる跡が多数

◆面影を残しつつ生まれ変わる歴史的建造物  東京都選定歴史的建造物にも認定されている江戸橋倉庫ビルは、外観を保存したまま、高層オフィスビルへと生まれ変わろうとしている。自然石を積み上げた美しい曲線の外壁には、水辺からクレーンで荷物を吊り上げて搬入していた際の名残が残っており、特徴でもある船橋状塔屋とともに保存される。
日本橋歴史探訪クルーズ

江戸橋倉庫ビル

◆東京の水辺は今後どう変わっていくのか?  ツアーでは、歴史的建造物の美しさをたっぷり堪能できたが、一方で首都高の老朽化や、水面に浮かぶゴミなど、気が滅入る風景も少なくはなかった。 「五輪開催後、国内外から東京が注目されているのを感じています。東京は水路の多い都市ですが、美しい景観保存と活用ができていない。このままでは、他国から『うちの国ではこんな水路の使い方しない』と言われてしまう。古く良いものは残しつつ、しっかりと手を入れることで、東京の水路がより良くなってくれればと思っています。そのために、人を川に近づけたい、興味を持ってほしい、私たちの活動がそのキッカケの一つになってくれればうれしいです」(中村さん)
日本橋歴史探訪クルーズ

漕ぐのをやめて休憩&撮影タイムも

 また、スタート直後に見えてくる日本橋水門では、「この一帯にある水門は全て一括管理されていて、非常時には遠隔ですぐに閉じることができます。東日本大震災で津波の可能性があったときや、爆弾低気圧で水位が急上昇したときなどに閉じられました」(中村さん)と、水辺にまつわる防災情報などもたっぷりと解説してもらった。  水辺の歴史的魅力、防災としての役割をたっぷりと感じ、さらに東京の水辺を知りたいと思わされるツアーであった。なお、「都心の水辺探訪クラブ」では、ほかにも日本橋川、隅田川、旧中川、北十間川からのスカイツリーライトアップの瞬間を見るクルーズ、荒川ロックゲート体験、多摩川下りなど都内の水辺を周遊するツアーを企画している。東京を水辺から眺め、魅力を再発見してみてはいかがだろうか。 ●都心の水辺探訪クラブ http://toshin-mizube.gr.jp/wp/ <取材・文・撮影/林健太>
おすすめ記事
ハッシュタグ