侍にノーヒットノーランを献上したMLB最後の打者が心境を吐露【日米野球2014】
「9回2アウト、最後の打席の気持ちだって? もちろんヒットを打とうと思って打席に入ったよ。ハハハ……」
侍ジャパンに27個目のアウトを献上して、最後のバッターとなったDHのジャスティン・モーノー(ロッキーズ)は、力なく笑うと足早にバスに向かおうとした。
東京ドームで行われた日米野球第3戦。侍ジャパンの繰り出す4投手がノーヒット・ノーランの大記録を達成した。先発の則本昂大(イーグルス)が5回6奪三振、15人をパーフェクトに封じ込んでリズムを作ると、2番手・西勇輝(バファローズ)が2回、3番手・牧田和久(ライオンズ)が1回、そして最終回を任された西野勇士(マリーンズ)がMLB打線を完璧に抑え込み、日本チームは日米野球史上初となるノーヒッターを記録し、(注:アメリカチームによるノーヒッターは過去2試合あり)4-0で快勝。本シリーズでの勝ち越しを決めた。
◆「タフ・ゲーム」。今季首位打者が本誌だけに語ってくれた心境とは?
通常、監督と、選手1人が現れる試合後の記者会見会場には、ジョン・ファレル監督しか現れず、「tip your hat off」(則本には脱帽だったね)と淡々と語るなど、MLBオールスターのショックは、そこかしこに見られた。
1番打者として4打席立ったベン・ゾブリフト(レイズ)は、広報担当に付き添われてロッカーを後にした。追いすがる記者団を広報担当がピシャリ封じ込むほど、試合後の関係者通路は緊張感に包まれていた。
「Tough game(タフ・ゲーム)」
これはMLBの選手たちが、相手チームに完璧に封じ込まれた時に口にする慣用句のようなもの。足早に立ち去ろうとする最後の打者、モーノーに対して「タフ・ゲーム」と背中越しに言葉を向けると、モーノーは立ち止まり、ノーヒッターを喰らった心境をSPA!本誌記者だけに吐露してくれた。
「最後の打席はストライクゾーンを上げて、ヒットに出来るボールを待ったんだけどね……。(結果はファーストゴロでノーヒット・ノーランが達成されたが)最後も内野安打を狙って必死に走ったけど、オレは足が速くないからさ(苦笑)」
◆サイ・ヤング賞投手を引き合いに出し、則本を絶賛
5回をパーフェクト、自身も1三振を喰らった則本の印象を聞くと、モーノーは冷静な口調でこう語ってくれた。
「彼はザック・グリンキー(2009年のサイ・ヤング賞投手。今季17勝)のようだったよ。真っすぐはそんなにムーブしない(動かない)けど、スプリットやスライダーは狙ったところに投げてくる。150kmを越える真っすぐはパワー十分だったし、何しろすべての球種を低めにコントロールする術を知っている。オレは決してザック・グリンキーがサイ・ヤング賞を獲得したことのある有名な投手だから名前を出しているんじゃないよ。今夜の彼(則本)は、本当にザック・グリンキーのようだったからね!」
本誌記者に足を止め、こんなに丁寧に語ってくれたモーノーという選手は、ツインズ時代の2006年には打率.321、34本塁打、130打点の大活躍でMVPを獲得。そして今季は新天地ロッキーズで打率.319をマークし、首位打者を獲得したトンデモナイ大打者だ。
また今回の日米野球第2戦では、金子千尋(バファローズ)からバックスクリーン右へ豪快なホームランを放ったことでその実力を日本のファンに知らしめたバッターでもある。
現役メジャー首位打者に「まるでサイ・ヤング賞投手のようだった」と絶賛された則本。東北の地からダルビッシュ、田中将大の系譜を継いでメジャー入りを目指すのか!?
取材・文/小島克典(スポカルラボ)
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