イチローが引退会見で語り尽くせなかったこと
3月21日、マリナーズのイチロー選手(45)が引退を表明した。日米通算で4367安打。’04年に樹立したMLB記録の262安打をはじめ、“記録製造機”とも言えるほど数々の偉業を達成した一方で、多くを語らないプレーヤーとしても知られたイチロー選手。84分間に及んだ引退会見で語り尽くせなかったこととは? MLB2球団で通訳として活躍し、イチロー選手をウォッチし続けた小島克典氏に緊急寄稿してもらった。
終わりのはじまりは、昨年3月の古巣マリナーズへの電撃復帰だった。
直近の5年半をニューヨーク、フロリダの2球団で過ごしたイチローが、シアトルに戻ってきた。
「いずれまた、このユニフォームを着てプレーしたいという気持ちは心のどこかに常にあったのですが、それを自分から表現することはできませんでした。それは(自ら去った)5年半前のことが頭にあったから。
(中略)でも、こういうかたちでまたこのシアトルのユニフォームを着てプレーする機会をいただいたことに、’01年にメジャーリーグでプレーすることが決まったときの喜びとはまったく違う感情が生まれました。とてもハッピーです」
当時、会見でイチローは、こう喜びを露わにしていた。だが、非情にも2か月後の5月、開幕から打率2割1分と調子の上がらなかったイチローは「Special Assistant to the Chairman」という肩書を与えられ、25人の選手枠から外れた。幾多の記録を塗り替えてきたイチローが、公式戦に出場する機会を奪われた瞬間だった。
その後、マリナーズは淡々とシナリオを遂行した。会長特別補佐職に「これまでの偉大な貢献に心から感謝と敬意を表し、特別な肩書きを贈る」という意図があったかどうかは定かでない。少なくとも引退を前提にしたエンディングの序章と思えた。しかし、イチローは嬉々として現役最後の大記録に挑み続けた。前人未到の「特別職からメジャーリーガーへの返り咲き」だ。だからこそ、引退会見でこの期間を「誇り」と表現したのだ。
「去年の5月からシーズン最後の日まで、(試合前の練習と試合後の握手だけに行動が制限された)あの日々は、ひょっとしたら誰にもできないことかもしれない。ささやかな誇りを生んだ日々であったと思うんです。どの記録よりも自分の中では、ほんの少しだけ誇りを持てたことかなと思います」
数字に追われ続けたそれまでの選手生活とはまったく異なる、己と向き合い続ける孤独な日々だった。その会長特別補佐・イチロー時代を経て、メジャーリーガー・イチローへ。3月20、21日と東京ドームで開催された開幕2試合でスタメンを勝ち取ったことは、イチローが現役生活の最後に成し遂げた偉業だったのだ。
「試合に出られなくなった日々が僕の誇り」
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