コンピュータに対するプロ棋士の秘策とは!? 将棋電王戦リベンジマッチ観戦記

将棋電王戦リベンジマッチ

電王手くんが初手▲7六歩を指す

 2014年12月31日の大晦日。東京・千駄ヶ谷の東京将棋会館にて、将棋のプロ棋士・森下卓九段とコンピュータ将棋ソフト「ツツカナ」が対決する『電王戦リベンジマッチ』が開催され、ニコニコ生放送にて完全生中継された。

⇒【画像】はコチラ http://nikkan-spa.jp/?attachment_id=776107

『電王戦リベンジマッチ』は、電王戦と同じマッチメイクで再戦を行うスピンオフ企画で、大晦日の開催は昨年に引き続き2回目となる。もはや恒例行事と言ってもよいだろう。

⇒【電王戦リベンジマッチ観戦記】プロ棋士に同じ技は2度通じない!?
http://nikkan-spa.jp/573919

 ただし、今回はいつもの電王戦とは大幅にルールが異なる特殊なものだった。まず、3時間の持ち時間が切れても1手につき10分の秒読み(通常は1分)となること。またプロ棋士は頭のなかだけで次の手を考えるのが普通だが、継ぎ盤に実際に駒を並べて考えることができるという2点が加えられていたのだ。

 普通の人間相手なら考えられない変則的なルールだが、これは森下九段が出場した電王戦終局後の記者会見でのコメントを受けて、実験的に追加されたものである。

⇒第3回将棋電王戦全5局を総括。「1勝4敗」の意味するものとは?
http://nikkan-spa.jp/626805

 そもそも人間は少ない持ち時間、特に秒読みではうっかりミスが増え、純粋な将棋の技術とは別のところでコンピュータに負けてしまう。そしてコンピュータは無数の将棋の盤面をメモリ内に保存して参照できるという、人間に対する「ハンデ」もある。こうした森下九段の指摘は、必ずしも見当外れなものではない。しかし本当に採用して開催してしまうところがニコニコらしいところとも言える。

 前代未聞の「森下ルール」ということもあり、不安がなかったわけではない。いかにエキシビションとはいえ、プロが盤駒を使って考えながら戦うところを見せるのはいかがなものかという意見も多かったこと。また森下九段が事前に同じ時間設定で練習したところ、時間が切れてから1時間に6手ずつしか進まず、決着までに相当な時間がかかると予測されたことだ。

 というわけで、記者は将棋会館での年越しも覚悟して取材に臨んだのだが、良い意味でも悪い意味でも想定外ばかりで、驚くべき対局となった。

  *  *  *

 まずプロが盤駒を使って考えるのは恥ではないかという意見は、対局がはじまってしばらく経ち、森下九段が継ぎ盤を使いはじめると、またたく間に杞憂であると明らかになった。森下九段がサービス精神を発揮して、ゆっくり丁寧にわかりやすく、現在の局面に現れている戦型(矢倉の定跡型・森下システム)の歴史や自分の考えなどを解説しはじめたのだ。

継ぎ盤を使いながらの検討の模様。森下九段のつぶやきは画面下に表示されている

継ぎ盤を使いながらの検討の模様。森下九段のつぶやきは画面下に表示されている

 今回はいつものデンソーのロボットアーム「電王手くん」に加え、NTTの音声認識技術を用いて継ぎ盤でのつぶやきをニコニコのコメントとして表示するハイテクなシステムも実装されており、森下九段の思考は完全にオープンな状態になっていた。普段はブラックボックスとなっているプロ棋士の思考をのぞき見ながら対局を楽しめるというのは、この継ぎ盤ルールならでは、コンピュータとの対局ならではだ。

 もちろん、継ぎ盤を使わないと勝てないのか、プロが継ぎ盤を使うのは恥ずかしいというそしりを免れることはできない。しかし、記者はこの数年コンピュータ将棋を取材してきているが、最近のコンピュータは本当に強い。森下九段本人も対局前に「負けるとは思えないが勝てるとも言い切れない」と発言していたように、たとえ人間がまったくミスをしなくても勝てるとは限らない。それほど強いのだから、今回はあくまでエキシビションとして、別のメリットが生まれていることで評価できるのではと感じられた。

51手目▲4九飛の局面図:日本将棋連盟モバイル(http://www.shogi.or.jp/mobile/)より

 たとえばツツカナが指した51手目▲4九飛。これは人間的にはまったく意味がわからない一手で、少なくとも森下九段は継ぎ盤では一瞬も考えていない。善悪不明、人間的にはどちらかと言えば「ありがたい一手」なのだが、コンピュータ相手では継ぎ盤を使ってもこうした予想外のことが起こる。ある意味で将棋の奥深さを感じるところでもある。これは継ぎ盤があってもなくても同じだ。

 一方、将棋は中終盤まで延々と互角の形勢が続いていた。ニコニコの画面にはツツカナの評価値と候補手が確認できるようになっており、ずっとツツカナは自分がほんの少し良いと言っていた。ただしこれは先手がツツカナだからということ、コンピュータは自分に対する評価が少し甘いということもあるので、実際はまったくの互角だろう。

 中盤以降はさすがに解説をやめた森下九段だが、継ぎ盤では何度も何度も「わからん、わからん」とつぶやきながら、ときに予想外の一手をくり出すツツカナに頭をひねり、苦しみながらも最善の応手を返していく。終盤にさしかかり、ギリギリの攻めでツツカナの玉に迫っていく森下九段。そうこうするうちに、ついに評価値は森下九段側にわずかに振れ始める。ニコニコのコメントも、にわかに活気を見せる。

 上がったり下がったりする評価値に一喜一憂するコメントを記者室で見ているうちに、いつの間にか時刻は23時を回っていた。もうこれは年越しは間違いない。23時50分ごろ、森下九段が意を決したように攻めの桂跳ねをくり出した直後に、ノータイムで予想外の一手が飛び出した。ツツカナの109手目▲9四歩打だ。

⇒【後編】はコチラ http://nikkan-spa.jp/776095

●将棋電王戦 HUMAN VS COMPUTER | ニコニコ動画
http://ex.nicovideo.jp/denou/

<取材・文・撮影/坂本寛>

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