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イラクに辛勝したサッカー日本代表。オーストラリア戦に向けて残った最重要課題とは?

次節、最重要課題となるセットプレーのディフェンス

 UAE戦でも直接FKとPKで2失点を喫した日本は、この日も後半15分に酒井宏樹が与えたFKから、FWサード・アブドゥルアミールに酒井高徳が競り負け同点ゴールを許した。今のところ、最終予選での失点は全てセットプレーからということになる。以前に比べ試合運びの部分で安定感を欠いており、不用意なボールロストから自陣深くに侵入され、慌てて対応した結果FKを与える、またはシュートまで持ち込まれてCKになる、といった場面が増えている。勝利したことですっかり忘れ去られているが、前半2分、この試合最初のCKからヘディングを許し右ポストを叩いたシーンも、失点になっていてもおかしくないシーンだった。 吉田麻也「チームとしてセットプレーを与える回数をまず減らしていきたいです。失点シーンに関しても、誰が競り負けたから悪いということではないですけど、やはり1対1で負けないようにしないといけない。競り勝たなければいかないシーンというのは試合中誰にでも起こり得ることなので、マンツーマンで各自が責任を持ってやれるようにしていきたいです」  日本はCKのディフェンス時にはニアに2枚の選手を置き、それ以外はマンツーマンで対応している。誰かがマークを外し、明らかにフリーの選手を作ってしまいその選手に決められたのであれば戦術的な修正が必要だが、この試合ではそういった場面は無かった。立ち上がりのCKのシーンでも酒井高徳が競り負けたが、1対1でマークできているのであれば、あとは吉田が言うように1人1人がそれぞれの相手に競り勝つしかないのだ。イラクよりも高さがある次節のオーストラリア戦では、空中戦での競り合いはさらに厳しい戦いとなる。だからこそ、チームとしてセットプレーに対する意識を今一度高めておく必要があるはずだ。

勝敗を左右しかねない、GKの判断

 現在日本代表のゴールマウスを守るGK西川周作は、その左足から繰り出される正確なフィードなどが高く評価されているが、ハイボールに対する強さにおいては、以前レギュラーだった川島永嗣に軍配が上がる。セットプレーのディフェンスにおいてGKの役割は当然ながら非常に大きいわけだが、前に出て、大きな相手と競り合いながらも強靭なフィジカルでボールを遠くへ跳ね返せるのは、川島の大きなストロングポイントだ。  だが、GKが前に出るプレーには大きなリスクも伴う。サッカーファンなら誰しも、06年ドイツW杯の初戦、日本-オーストラリア戦での同点ゴールを忘れてはいないだろう。後半38分、オーストラリアの左サイドからのロングスローに対して川口能活が飛び出し、パンチングを試みる。しかし途中投入されたケネディの圧力もありうまく弾ききれず、こぼれ球を今もオーストラリア代表に名を連ねるケーヒルに押し込まれてしまった。あのシーンでも分かるように、「GKが前に出る=ゴールがガラ空きになる」ので、ボールに触れられなかった、もしくは遠くに弾けなかった場合、一気に大きなピンチとなってしまうのだ。  川島も、空中戦に強い反面、無理にキャッチにいってファンブルし、決定機を招いてしまったことが多々あった。W杯本戦はもちろんだが、この最終予選でも1つのミスが命取りとなる。たった一度、ほんの少し判断を躊躇することでW杯行きを逃すということも、十分にあり得るのだ。
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空中戦で不利だからこそ求められる、選手間の密な連携
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フリーライターとして雑誌、Webメディアに寄稿。サッカー、フットサル、芸能を中心に執筆する傍ら、MC業もこなす。2020年からABEMA Fリーグ中継(フットサル)の実況も務め、毎シーズン50試合以上を担当。2022年からはJ3·SC相模原のスタジアムMCも務めている。自身もフットサルの現役競技者で、東京都フットサルリーグ1部DREAM futsal parkでゴレイロとしてプレー(@yu_fukuda1129

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