「俺、もしかして間違った場所に来ちゃった?」――46歳のバツイチおじさんはヨガの総本山で途方に暮れた〈第37話〉
「えっ…………」
一瞬、呆然とした。
そして、密かに感じていながらも心の奥にひた隠しにしていた感情が湧いてきた。
「……俺、もしかして避けられてる?」
思えば、「ごっつさんも一緒にどうです?」という誘い文句に俺が機敏に反応し、るりちゃんを追いかけてシヴァナンダ・アシュラムまでやってきた。しかし、よく考えてみたら、本当に話の流れで、単なるノリで誘われただけなのかもしれない。
るりちゃんがもしそうなら、もし単なるノリで誘ってみただけだったら……。
「俺、ちょっと怖い人かも……」
冷静に考えてみたら、20代の女性がお父さんと同じくらいの男性を恋愛対象として見るわけがない。
まして、バルカラビーチで最後に会った時の俺は白髪の宮崎駿だ。
もしかして、頑張って黒く染め、ソフトモヒカンの清水健太郎カットにしてきたことに、るりちゃんがドン引きしているのかもしれない。
元々俺は単純な性格だ。自分がこうだと思ったら周りが見えなくなる。
「あれ? 俺、またやらかした?」
今までこの旅で出会ったすべての女性にフラれている。
自分の見た目のこともよく知っている。決してイケメンではない。
顔は中の中。角度によっては中の下だ。
身長も167センチ。日本男性の平均より低い。
どんぐりまなこはチャームポイントだと思っているが、
コンタクトを外すと牛乳瓶の底のようなメガネだ。
そんな男が歳をとり、今は46歳のおじさん。しかもバツイチ。
俺は心の中で、小さくこうつぶやいた。
「俺のことを好きになってくれる女性なんて、世界中で一人もいないんじゃねーのか」
一人湖畔に立ち、登りきった太陽を見つめた。
南インドの太陽は火傷しそうなほど大きくて、絶望の表情を浮かべた俺に向かって手を叩きながら大爆笑してるように見えた。その時だった――。
白人女性「ねぇ君、何人?」
超美人の20代後半くらいの白人女性が俺に話かけてきた。
俺「え、日本人だけど」
美人女性「へぇー、珍しいね。日本人か。私、サワ。南フランスから来たの。よろしく!」
俺「あ、よろしく。ごっつです」
美人女性「ごっつー、面白い名前~」
彼女は「ごっつー! ごっつー!」と言いながらケラケラと笑った。
♫ AH もっともっと素直になれ 心の中身を 空にして 涙も溶かして 素直になれ 愛が終わった わけじゃない 先ほどの瞑想で消え去ったはずの雑念が一瞬にして俺の中に生まれた。 俺「オッケー! 今行く!!」 俺は上半身裸になり、湖に飛び込んだ。 サワ「ごっつ、イイねー! 最高!!」 湖で立ち泳ぎをしながサラと目が合いふたりして笑った。 すると、他の白人女性たちが俺たちのとこへやって来た。 白人女性①「えーー、泳いでんのーー? クレイジー!」 白人女性②「楽しそう! 私も泳ぐ!」 そういうと数人の20代前半とおぼしき白人女性も下着姿になり、湖に飛び込んだ。 「やばい……。なんだここは。アシュラムってのはハーレムなのか……?」 それから、46歳のおっさん一人と白人女性たちで湖を泳ぎ回った。 楽しかった。 とにかく、そこには楽しさしかなかった。 るりちゃんに冷たくされたことも忘れ、俺はハーレムタイムに身をゆだねた。 南インドケララ州ニヤルダム村にあるシヴァナンダ・アシュラム。 ただの修行の場だと思っていたら、こんな楽しそうな出会いもある。 「もしかして、ここは恋のアシュラムかもしれない」 さっきまで俺を見て大爆笑していた太陽が、ニヤニヤしながら俺を見つめていた。 次号予告『アシュラムでハーレムモード全開! フランス美女と日本のヨガ美人の間でバツイチおじさんの恋心が揺れまくる!?』を乞うご期待! 1969年大分県生まれ。明治大学卒業後、IVSテレビ制作(株)のADとして日本テレビ「天才たけしの元気が出るテレビ!」の制作に参加。続いて「ザ!鉄腕!DASH!!」(日本テレビ)の立ち上げメンバーとなり、その後フリーのディレクターとして「ザ!世界仰天ニュース」(日本テレビ)「トリビアの泉」(フジテレビ)をチーフディレクターとして制作。2008年に映像制作会社「株式会社イマジネーション」を創設し、「マツケンサンバⅡ」のブレーン、「学べる!ニュースショー!」(テレビ朝日)「政治家と話そう」(Google)など数々の作品を手掛ける。離婚をきっかけにディレクターを休業し、世界一周に挑戦。その様子を「日刊SPA!」にて連載し人気を博した。現在は、映像制作だけでなく、YouTuber、ラジオ出演など、出演者としても多岐に渡り活動中。Youtubuチャンネル「Enjoy on the Earth 〜地球の遊び方〜」運営中
湖にはサワと数人の白人女性しか残ってない。
サワ「ねぇごっつ、暑くない? ちょっと湖で泳ごうよ」
俺「え? ここで? 俺、水着持って来てないよ」
サワ「水着? 私もないわよ。でも、どうせこの後、ヨガで汗びしょびしょになるのよ」
俺「でも、帰り道が寒いよきっと」
サワ「あ、そうか」
サワは「しまった」という表情を浮かべ、遠くを見ながら顔をしかめた。この娘、少しアホかもしれない。
サワ「じゃあ脱いじゃえばいいいか!」
そういうと、Tシャツをおもむろに脱ぎだしブラジャーになった。
俺は目が点になり固まった。
そして、今度は短パンも脱ぎ、パンティになった。
サワ「ごっつ、泳ごう!」
そう言って湖に飛び込んだ。
サワは呆気にとられてる俺を見て、湖の中から向かって叫んだ。
サワ「ごっつも早くおいでよ~!」
俺は瞬時に脳みそをフル回転させた。
るりちゃんはここにいない。
るりちゃんは俺になぜか素っ気ない。
目の前には下着姿で華麗に泳ぐサワがいる。
そして、サワが俺の名を呼んでいる。
すると突然、脳内iTunesにまた田原俊彦の『抱きしめてTONIGHT』がかかった。
日刊SPAで連載中の世界一周花嫁探しの旅第36話〜美女ヨギーニ編〜今回のテーマ曲は田原俊彦の抱きしめてtonight です。やっぱトシちゃんのダンスはキレがあるね〜https://t.co/DqxC0AkFmc
— 後藤 隆一郎 (@ikirudakesa) 2017年2月24日
♫ AH もっともっと素直になれ 心の中身を 空にして 涙も溶かして 素直になれ 愛が終わった わけじゃない 先ほどの瞑想で消え去ったはずの雑念が一瞬にして俺の中に生まれた。 俺「オッケー! 今行く!!」 俺は上半身裸になり、湖に飛び込んだ。 サワ「ごっつ、イイねー! 最高!!」 湖で立ち泳ぎをしながサラと目が合いふたりして笑った。 すると、他の白人女性たちが俺たちのとこへやって来た。 白人女性①「えーー、泳いでんのーー? クレイジー!」 白人女性②「楽しそう! 私も泳ぐ!」 そういうと数人の20代前半とおぼしき白人女性も下着姿になり、湖に飛び込んだ。 「やばい……。なんだここは。アシュラムってのはハーレムなのか……?」 それから、46歳のおっさん一人と白人女性たちで湖を泳ぎ回った。 楽しかった。 とにかく、そこには楽しさしかなかった。 るりちゃんに冷たくされたことも忘れ、俺はハーレムタイムに身をゆだねた。 南インドケララ州ニヤルダム村にあるシヴァナンダ・アシュラム。 ただの修行の場だと思っていたら、こんな楽しそうな出会いもある。 「もしかして、ここは恋のアシュラムかもしれない」 さっきまで俺を見て大爆笑していた太陽が、ニヤニヤしながら俺を見つめていた。 次号予告『アシュラムでハーレムモード全開! フランス美女と日本のヨガ美人の間でバツイチおじさんの恋心が揺れまくる!?』を乞うご期待! 1969年大分県生まれ。明治大学卒業後、IVSテレビ制作(株)のADとして日本テレビ「天才たけしの元気が出るテレビ!」の制作に参加。続いて「ザ!鉄腕!DASH!!」(日本テレビ)の立ち上げメンバーとなり、その後フリーのディレクターとして「ザ!世界仰天ニュース」(日本テレビ)「トリビアの泉」(フジテレビ)をチーフディレクターとして制作。2008年に映像制作会社「株式会社イマジネーション」を創設し、「マツケンサンバⅡ」のブレーン、「学べる!ニュースショー!」(テレビ朝日)「政治家と話そう」(Google)など数々の作品を手掛ける。離婚をきっかけにディレクターを休業し、世界一周に挑戦。その様子を「日刊SPA!」にて連載し人気を博した。現在は、映像制作だけでなく、YouTuber、ラジオ出演など、出演者としても多岐に渡り活動中。Youtubuチャンネル「Enjoy on the Earth 〜地球の遊び方〜」運営中
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