更新日:2022年10月29日 01:37
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アニメタルが30万枚の大ヒット! 古き良き“アニソン魂”を守ったジャパメタ

社会現象を起こした『エヴァンゲリオン』

 1995年放送のTVアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』は、社会的な現象を巻き起こした。そのオープニングテーマ「残酷な天使のテーゼ」や、前年(1994年)放送のTVアニメ『魔法騎士レイアース』のオープニングテーマ「ゆずれない願い」などが大ヒットし、アニメとのタイアップによる売上の影響力が認知され、大手レコード企業がアニメのスポンサーに携わるようになった。この頃、人口の多い団塊ジュニア世代も20代後半の時期で、Jポップをはじめとする音楽産業の景気も良く、オタクもLD(レーザー・ディスク)などのアニメ商品を消費していた。90年代は、『エヴァンゲリオン』を核に、オタクが急激に増加しはじめた時期でもあった。  この頃、アニソンを特集した番組がいくつか放送されている。まずはニッポン放送のラジオ番組『アニメ紅白歌合戦』(1998年)である。『アニメ紅白歌合戦』とは、1983年、1998年、1999年、2012年、そして2014年以降毎年開催されているアニソンのイベントであり、これを放送したラジオ番組だ。ここで注目したいのは、1998年と1999年に、2年連続でイベントが開催されていること。この時期、アニソンが注目されていたということが分かる。  その翌年、過去にテレビで放送されたアニメや特撮の主題歌を取り上げるフジテレビの音楽バラエティ番組『快進撃TVうたえモン』(1999年)が、今田耕司と松本明子司会でレギュラー放送された。フジテレビは前年(1998年)にも、アニソンを紹介する特別番組を複数本放送している(『アニメソングトップ40スペシャル』、『決定版!アニメソング超ベストヒット100』、『史上最強ベストヒットアニメ紅白歌合戦’98』)。アニソンの勃興にもっとも貢献したマスメディアはフジテレビだった。

LAZYの再結成とJAM Project結成

 1998年、特撮番組『ウルトラマンダイナ』の主題歌担当だった元LAZYの井上俊次によって、エンディングテーマ「ULTRA HIGH」が起用され、それをLAZYが演奏することになり、再結成している。  この頃は、アニメやゲームなどに、作品内容にそぐわないタイアップ曲が多かった。作品名またはロボットなどのキャラクター名を連呼せず、「アーティスト」の個性を優先させるタイアップ曲がはびこる風潮にうんざりするアニソン好きのリスナー(筆者含)は多かったように思う。  アニソン四天王の一人である水木一郎は、その風潮に疑問を感じ、「21世紀へ古き良き“アニソン魂”を残したい」との想いから、JAM Projectを結成した。創世期メンバーは水木一郎、影山ヒロノブ、松本梨香、さかもとえいぞう、遠藤正明。所属事務所はランティス。影山が元LAZYで、さかもとが元ANTHEMだったことで、ジャパメタの色合いが強かった。遠藤も前述の『ROBOMETAL ZZZ』でヘヴィメタルを唄っている。プロデューサーの井上俊次は、LAZYのメンバーでランティスの代表である。LAZYについては連載第10回で詳しく紹介した。

古き良き“アニソン魂”を守ったジャパメタの功績

 アニメソングとヘヴィメタルはアニメタルで融合し、一般層にまで浸透した。そしてそれは、ジャパメタの始祖であるLAZYが絡み、JAM Projectという形で結実した。  「アーティスト」の個性を優先させるタイアップ曲がはびこる風潮から、アニソンを守ったのは、ジャパメタだった。ジャパメタは、古き良き“アニソン魂”を残すことに、多大な貢献をしているのである。メタラーは、このことについて誇っていい。  アニソンとメタルの融合は、海外のOTAKUにも分かりやすく、伝達や拡散の手段として非常に有益と言える。日本のサブカルチャー、オタクカルチャーの海外進出において、アニソンとメタルが融合した音楽形態「アニソンメタル」について、理解を深めていく必要があるだろう。
(やまの・しゃりん)漫画家・ジャパメタ評論家。1971年生まれ。『マンガ嫌韓流』(晋遊舎)シリーズが累計100万部突破。ヘビメタマニアとしても有名。最新刊は『ジャパメタの逆襲』(扶桑社新書)
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ジャパメタの逆襲

LOUDNESS、X JAPAN、BABYMETAL、アニメソング……今や世界が熱狂するジャパニーズメタル! !  だが、実はジャパニーズメタルは、長らく洋楽よりも「劣る」ものと見られていた。 本書は、メディアでは語られてこなかった暗黒の時代を振り返る、初のジャパメタ文化論である。★ジャパメタのレジェンド=影山ヒロノブ氏(アニソンシンガー)の特別インタビューを掲載!

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