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アニメタルが30万枚の大ヒット! 古き良き“アニソン魂”を守ったジャパメタ

<文/山野車輪 連載第12回>

アニメタルのCDが30万枚の大ヒット

 今から約20年前、「アニメ」と「メタル」の2つを合わせた「アニメタル」が、社会現象となった。1996年の秋に発表されたアニメタルのデビューシングル「アニメタル」は約15万枚、翌年3月リリースの1stアルバム『アニメタルマラソン』は約30万枚の売上を記録し、オタクおよびメタラー以外の一般リスナー層にも浸透するほどの大ヒットとなった。筆者が発売当日、レコード屋に駆け込んだことは言うまでもないだろう。アニメタルは、サラリーマンの忘年会のカラオケなどでも楽しく歌われたようである。

アニメタルの1stアルバム『アニメタルマラソン』(1997年)

 アニメタルの登場は、アニソンとジャパメタの結びつきを可視化し、また、アニソン界隈にジャパメタのミュージシャンが多く関わるようになったという効用もあった。またそれによって、アニソンを守ることに多大な貢献をしたのである。

数々のアニソンを唄ってきたアニメタルのヴォーカル坂本英三

 アニメタルのシンガーには、元ANTHEMの坂本英三が抜擢された(さかもとえいぞう名義)。坂本はアニメタル結成以前にも、アニソンの仕事を手がけていた。  80年代後半、青年向けマンガ誌『週刊ヤングジャンプ』(集英社)は、OVA(オリジナルビデオアニメ)やイメージアルバムの制作に積極的に乗り出した。その音楽の多くは元Heavy Metal Armyのリーダー中島優貴が手がけており、前述の坂本も、『力王』(1989年)、『力王2』(1990年)、『黄龍の耳』(1993年)、『俺の空(三四郎編)』(1993年)、『孔雀王』(1994年)など複数の作品で唄っている。  坂本が在籍していたANTHEMは、今や日本代表のヘヴィメタル・バンドとして君臨している。彼らの楽曲は、OVA『デビルマン <誕生編>』(1987年)、OVA『デビルマン 妖鳥死麗濡編』(1990年)に起用されたり、またPCゲーム『XANADU』のイメージソング「XANADU」(1986年)を任されるなど、アニメやゲーム音楽の世界での活動も経験していた。

PCゲーム『XANADU』のイメージソング「XANADU」(1986年)(筆者撮影)

 歴史のなかに埋もれ、忘れ去られていったマイナーなOVAのなかでも、とりわけ原作付きビデオ・アニメは超マイナーな存在だ。イメージアルバムやイメージソングに至っては、もっと知られていない。坂本は、アニメタル以前のANTHEM在籍の時代、そして脱退後に、ひっそりとアニソンの仕事をいくつも経験していた。すでにアニソン歌手としてのキャリアがあったのだ。
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ジャパメタ&『ジャンプ』の最強タッグがアニソン界を席巻
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