更新日:2022年10月29日 01:50
ライフ

「名古屋なんて…」が口癖、名古屋人の性格が謙虚な理由

―[大名古屋論]―
 経済は安定、メシは旨い、魅力がないと小バカにされるが、住めば都の住み心地……なぜかバカにされ続ける名古屋の底力、真の姿に迫った。 名古屋

他者の評価で安堵する名古屋人の口癖は「名古屋なんて……」

 名古屋人は街の魅力を自らPRしようとはしない……。ご当地で長らく取材・執筆活動を続けているライターの大竹敏之氏は、名古屋人のこうした引っ込み思案を表す典型的なフレーズとして「名古屋なんて、だいすき」を挙げる。 「これは名古屋市が、今年4月に名古屋の魅力を内外にアピールするために公表したキャッチコピーです。特に年配の名古屋人に顕著な傾向ですが、他地域の人から名古屋のいいところを聞かれると、決まって『名古屋なんて何もない』と返してしまう。その口癖から発想したものでしょう」  手土産を「つまらないものですが……」と渡す謙遜文化の一種だが、名古屋市はこれに対して強めの皮肉を利かせたのである。 「名古屋人の自己評価の低い言葉は、自分たちの魅力を本当に知らないからでもあります。外の世界に出ないから、『名古屋のここが他と違って、これが個性なんだ』ということに気づかない。また、製造業で潤っているから、わざわざ観光に来てもらう必要などないと思っている名古屋人は多く、名古屋の魅力を外にアピールする動機がないというわけです」  名古屋人は自らの感性に従い評価する勇気がない。自分ではいいと感じても、その判断は本当に正しいのかという不安を、常に抱えていると大竹氏は指摘する。 「よそで評価されていると聞いて初めて安心するんです。例えば名古屋の食文化がそうです。2泊3日の旅行中、朝は喫茶店のモーニングから始まり、昼は味噌カツ、夜はひつまぶし、翌日は台湾ラーメン……と3食すべてその地域独自のものを体験できるのは、沖縄か名古屋くらいです」 モーニング 名古屋の食は強力な観光資源ではあるが、「なんでも味噌をかけるゲテモノ料理」と揶揄されていた頃は、外部に向けて名古屋人がその魅力をアピールする機運はまったくなかったという。 「転機は’01年、『名古屋めし』という言葉が東京で生まれて逆輸入的に名古屋に入ってきた。すると『東京でウケている、いいものなんだ』と受け入れて名古屋人も使い始めました。自分でジャッジをしない文化とも言えますね」  東京と違うことが総じて「ダサい」とみなされていた時代は終わり、TV番組『ケンミンSHOW』のように「個性的で面白い」と見られるようになってきた昨今。大いなる街のポテンシャルを知りつつも自己アピールの薄い名古屋人に、大竹氏はやきもきしている。 【大竹敏之氏】 ’65年、愛知県常滑市生まれ。京都の大学を卒業後、名古屋の出版社に勤務。フリーライターに転向し、東海圏の珍スポットやB級グルメを中心に執筆。『名古屋めし』『なごやじまん』他、名古屋関連の著書多数
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