仮想通貨1000万円を盗まれた件、打ち明けられた母親は何を答える?――「お金0.0」ビットコイン盗まレーター日記<第4回>
鍵を閉め忘れた部屋(事故物件)に戻ると2羽の文鳥が元気よく鳴いている。
ベッドに仰向けになる。
はあああああああああぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ…
ここから飛び降りたら楽になれるかな。3Fか。
今度生まれ変わったら、コツコツちゃんと働いて、お金貯めて幸せに暮らそう。
そしてどこか誰も知らないところで、文鳥たちと暮らすんだ。
みんなになんて説明しよう。しばらく黙って、時期が来るのを待ったほうが、いや、でも
カードが止められ…でんわだ…。母さん…。
僕「もしもし…」
母「もしもし!いま仮想通貨下がっとるやろ!」
僕「うん」
母「買い時ちゃうん?あと100万円くらいなら何とかして振り込めるけど!」
僕「…」
母「なんや?結構減ったん?」
僕「…」
母「今なんぼなん?」
僕「ぜろ…」
母「ゼロ?」
僕「…」
母「どういうこと???」
僕「…うん」
母「ウンちゃうわ。説明せえ」
僕「…盗まれた」
母「ヌスマレタァ!?」
僕「うん」
母「警察は?」
僕「行った」
母「それで?」
僕「知能犯担当からの連絡待ち」
母「盗まれたんやったら保険とか補償とかはないん?」
僕「わからん。取引所に問い合わせした」
母「それで?」
僕「返答待ち…」
母「電話せえ!!!」
僕「番号わからん。載ってない…」
母「なんやそれ。おかしいやろ」
僕「…」
母「そういえば、あんたクレジットカードで仮想通貨買ったいうてなかった?」
僕「買った」
母「支払いどうすんねん」
僕「払えない」
母「いくら買ったん?」
僕「90万くらい」
母「きゅうじゅうまん…ホンマアホやな」
僕「…」
母「投資は!余裕がある!オカネでするもんや!!」
僕「うん」
母「だから仮想通貨なんてやめときっていうたやろ!!!」
僕「…」
母「聞いとんか!」
僕「…どうしよう」
母「ハタラケ!!!!!!!!」
ガチャリンコ
来週へつづく
(いでの・たつや) 1994年、兵庫県生まれ。元かけだし俳優、高校卒業と同時に上京。文学座附属演劇研究所卒業後、エキストラ出演やアルバイト勤務を華麗にこなし、たまたま仮想通貨で得た大金を秒速で盗まれる。Twitterアカウント(@tatsuya_ideno)
1
2
この連載の前回記事
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ