安彦考真が40歳でJリーガーを目指す理由「サッカー選手は個人競技のアスリートの姿勢を見習うべき」
「自分が自分の人生のリーダーになるため、クラウドファンディングJリーガーに挑戦した。本当は何をやりたいのか。やりたいことはプロ選手なんだと再認識したんです。たしかに、40歳から目指すなんて間抜けかも知れません。でも、誰もやっていないなら、結果はわからないはずです。僕は生徒に常々こう言っていたんです。『可能性はフィフティフィフティ』だと。やるかやらないかだから。でも、確率は1~99%まである。まずやってみて、その上で確率が低いなら高める努力をすれば良いと」
成功率上昇のため、彼は自分の努力を可視化させた。トレーニング風景をSNSにアップし、今まで通りで足りない分はプロにも頼ろうと考えた。専門的ジムとトレーナーを使うため、実際にクラウドファンディングによる資金集めをスタートした。
しかしながら、まだまだクラウドファンディングは一般的とはいえない方法。聞き慣れない単語に対して“怪しい投資話”のように受け取る人も少なくなかったという。
「みんな僕から離れていったんです。何だよ、こいつヤベーなと。クラウドファンディングへの拒否感もあるし、何かヤベーものに感化されたんじゃないか? みたいな(笑)。『プロ選手を目指します!』と初めてフェイスブックに告知するときには不安、怖さもありました。だけど、そんなこと言っていたら、いつまでも後悔を引きずっていく。他人に『俺ってね』と言えない、聞きかじったことしか話せない、主語が“俺”にならないんですよ」
こうして踏み出した結果、目標額85万円のクラウドファンディングが、121万まで貯まった。
「ほとんどがそこまで言うならお前の夢に乗っかるわ、って人。リターンを求める人はあまりいなくて。自分ができないことをお前はやろうとしているから頑張れ! といってくれて」
そして、テレビ東京の『フットブレイン』に出演したことで追い風が吹く。より広く活動を知られ、多くの人と話すきっかけにもなった。
「お金と物質の取引から、人の感情や思いと物質が交換できたり、感情にペイしたり、っていう時代に少しずつ変わってきていると思います。今後2~3年で一層大きく変化するのでは? にも関わらず、スポーツ界は結構なムラ社会なので、新しい潮流が入りづらい。これを否定したいのではありません。Jリーガーでもクラブでも、僕は彼らがどれだけ働き、スゴいのかを知っています。だから、否定ではなくサポートをしたいんです」
今までと違うアプローチの広報活動や、選手とクラブの状況改善策などを、自身のトライによって打ち出したいと、彼は言う。
「水戸ホーリーホックの西村強化部長が考えるプロの要素は2つ。ピッチ内とピッチ外。前者はもちろんトレーニングとか競技面の追求。後者については発信だと」
水戸としては、若手の意識や思考を変えるべく、“影響力のある選手”を求めていた。
「外部から招いたコーチやスタッフでは、どうしても授業っぽくなり響きにくい。選手同士だと一緒にやってみようとか、どうやるの? となる。具体的になってくるんですよ。それに、スタッフとしての加入じゃ、僕のクラウドファンディングは成功しない。選手という無謀な挑戦だから応援してもらえて、共感を集められるんです」
共感を集めるということは、ファンを集めるということ。ここに安彦氏が考えるサッカー界発展の鍵があるという。
「今までJリーグがしてきた地域密着も大事です。加えて、例えばプロレス型のようなアクションが入って欲しい。例えば個人競技、興行色の強いプロレスラーって、みんなTwitterとかSNSをやっていて、自分のストーリーを前面に出すんです。人のストーリーや歴史には、感情移入させるパワーがあると思っていて、僕はそっちでやりたい。これって、すでに資金力もある大クラブの鹿島やレッズでは難しいでしょう。ローカルクラブが、発展の可能性が高い地方クラブだからこそトライできる」
水戸というチーム、土地にやってきて感じたのが、人々の暖かさと吸収力だとか。
「みなさん、積極的に新しいことを吸収しようと取り組んでいる。ただ、一歩を踏み出すのはまだ抵抗があるんです。踏み出しちゃえば大したことないのですが、その一歩を押してやれれば……。僕はそういう集客をしたい」
水戸ホーリーホックは現在の平均観客動員数が約5千人。今シーズンの開幕戦の動員数の目標を1万人と掲げていた。そのためには、選手ひとりひとりの意識改革が必要だとも。
「それはクラブではなく、選手達がやるべき。そのほうが簡単でしょう。選手それぞれが五人でも十人でも百人で増やせば、1万人なんてあっという間。そしてそのファンは、たとえチームが変わってもついて来てくれるんです。プロレスラーと同じ手法が良いかはさておき、参考にするべきことはたくさんある」
選手とファンの関係性にも疑問を投げかける。
Jリーガーも個人競技のアスリートの姿勢を見習うべき
編集プロダクション勤務を経て、2002年にフリーランスとして独立。GETON!(学習研究社)、ストリートJACK(KK ベストセラーズ)、スマート(宝島社)、411、GOOUT、THE DAY(すべて三栄書房)など、ファッション誌を中心に活動する。また、紙媒体だけでなくOCEANSウェブやDiyer(s)をはじめとするWEBマガジンも担当。その他、ペットや美容、グルメ、スポーツ、カルチャーといった多ジャンルに携わり、メディア問わず寄稿している。
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